1月20日、オバマ米大統領が就任した。華々しい祝賀式典のテレビ中継番組は2種類の電波により、全米の家庭に届けられた。アナログ、デジタルの両チャンネルのことであり、同じ内容の番組コンテンツを流す「サイマル放送」が行われている。ブッシュ前政権下で連邦議会は2月17日のアナログ波完全停止(デジタル波への完全移行)を決めていたが、オバマ新大統領はこれを先送りしようと動き始めた。米国の方針転換には経済危機が影を落としており、2011年の地デジ完全移行を目指す日本にも、影響を及ぼすかもしれない。

 議会が一旦決定したことを覆すには、ホワイトハウスと議会をコントロールする与党・民主党幹部は相当な労力を求められる。だが、オバマ大統領は政権移行の準備段階からこの作業に着手しており、程なく決着を見そうだ。

アナログ波停止、当初は06年だったが・・・

 1998年秋、ビル・クリントン民主党政権は世界に先駆けて、地上デジタル放送システムへの移行を始めた。その際、既存アナログ放送の円滑な終了が課題となった。結果として、各テレビ局には2つのチャンネルが与えられ、例えばニューヨーク中心に地上放送を行うWCBSは「WCBSアナログチャンネル」に加え、「同デジタルチャンネル」も運営するようになり、サイマル放送を始めた。

オバマ政権移行チーム、「地デジ」移行延期を要請

この不況では、デジタル対応テレビも・・・(米バージニア州の家電量販店)〔AFPBB News

 地上デジタル放送へスムーズに移行するには、全米のテレビ視聴家庭が長年利用してきたアナログ放送受信専用テレビの買い替えか、あるいはデジタル放送受信用のコンバーター購入・設置が必要となる。当時、移行のための猶予期間はおよそ8年間、2006年までとされた。米国の放送・通信政策の実施を担う連邦通信委員会(FCC)は、期限内のデジタル放送への完全移行を目指し、諸政策を打ち出してきた。

 この間、ホワイトハウスの主は共和党のブッシュ大統領に交代した。2001年9月の同時テロ以降、アフガン、イラクの両戦争が勃発したほか、家庭ではデジタル波対応テレビへの買い替えが進まなかった。このため、ブッシュ政権は議会に働き掛け、アナログ波の完全停止を3年余り猶予し、2009年2月17日へ延期した。

 同時に議会では、既存のアナログテレビでデジタル放送を視聴可能なコンバーター(実勢価格40~80ドル程度)の購入補助の名目で、「40ドルクーポン券」を希望する家庭へ1枚ずつ割り当てる措置を決定。総額13億4000万ドル(約1200億円)の予算を計上した。

 しかし、クーポン給付予算は昨年末までに枯渇してしまい、政府は今年1月4日にクーポンの受け付けを中止する事態に追い込まれた。一方、1月10日時点のウエイティングリストには110万世帯が登録されており、この計画自体が機能不全に陥っている。