テスラ、量産型の新型EV「モデル3」を納車

テスラの「モデル3」。同社提供(2016年4月1日提供)。(c)AFP/TESLA MOTORS〔AFPBB News

 テスラの電気自動車(EV)の新型車「モデル3」が発売された。価格は「ベースグレード」でも3万5000ドルと高級スポーツカー並みだが、発売前から予約が50万台を超える人気だ。これをきっかけにEVが世界で話題になり、ガソリン車からの買い換えを真剣に検討する人が増えてきた。

 フランスのマクロン政権は、温暖化対策の「パリ協定」順守のために「2040年までに内燃機関を動力とする自動車の販売・生産を禁止する」という目標を発表した。イギリス政府も同様の方針を発表し、ヨーロッパでは2035年までにガソリン車・ディーゼル車はなくなるとの予測もある。電気自動車はガソリン車を駆逐するほど魅力的なのだろうか?

ドライバーにとってEVは魅力的か

 答は、今のところノーである。テスラのモデル3は今までより航続距離が伸びたが、それでも最大約500km。これはカタログ性能で、リチウム電池の劣化は速いので、300kmぐらいとみたほうが安全だろう。これでは1泊2日の家族旅行が限界で、長距離トラックなどの業務用には無理だ。

 出先に「充電スタンド」があればいいが、充電には30分以上かかる。EVは自宅に充電設備をもつドライバーが買って、夜間電力で充電するものと考えたほうがよい。これは集合住宅では難しい。

 地方都市で一戸建ての住宅から短距離通勤する人の高級自家用車としては使えるかもしれないが、逆にいうと充電スタンドは採算に乗らない。今後も充電インフラが普及することは考えにくい。

 EVには発進加速がよいとか静かだという魅力もあるが、最大の魅力は燃費である。条件の設定で大きく違うが、たとえば日産の公式サイトでは、1000km走る燃費は(夜間電力で)ガソリン車の約20%ということになっている。

 しかしリチウム電池は高価なので、買ってから廃車にするまで5年間の「所有コスト」で考えると、平均約8万ドルで、内燃機関(平均約3万6000ドル)の2倍以上というのが米エネルギー省(DOE)の計算である。

 これを2022年までに内燃機関と同じ水準まで下げるのがDOEの(希望的観測を込めた)予想だが、その最大のポイントは電池の技術進歩だ。図のように世界の電池コストはここ10年で8割下がったが、そのスピードは鈍化している。

電池のコスト低下(点線は予想)、出所:DOE