ライス、粘り気のあるカレーソース、そして肉と野菜の具。日本のカレーが確立したのはどうしてか。

 データ解析技術を駆使して、もし「料理の独自発展度」を国ごとに数値化できたら、日本は最高レベルに入るのではないか。入ってきた料理をレシピに忠実に作るだけでなく、自分たちに合うように独自にカスタマイズしてきた事例を日本人はたくさん持っている。ラーメン、ケーキ、焼肉もそうだ。

 もうひとつ、独自のカスタマイズという点で忘れてならない料理がある。「カレー」だ。

 日本のカレーは、明治期の文明開化とともにイギリスから入ってきた。それから150年近く。カレー粉で作ったカレーソースに肉や野菜の具材を入れ、ライスにかけて食べる日本のカレーは、料理人にも家庭の主婦にも改良を加えられ、独自に発展してきたものだ。

 なぜ、日本人は、そこまでカレーを独自に発展させることに執心してきたのだろう。この謎に深く迫れる本がこの8月に出た。水野仁輔著『幻の黒船カレーを追え』(小学館)だ。

水野仁輔著『幻の黒船カレーを追え』(小学館)。

「父親」がどんな人だったか分からない

 著者はカレー研究家として知られる。食べたり調べたりするだけでなく、自分で作ってカレー道を極めようとする人物だ。『カレーの教室』(プレジデント社)というムックで著者が伝授する「いつものルー、材料、鍋」で作るポークカレーを筆者も試すが、手順次第でこれほどのカレーが自分でもできるのかと驚かされる。

 そんなカレー研究家の著者には「自分を突き動かそうとしていた」謎があった。日本にやってきたカレーはどんな姿をし、どうやって作られていたのか、という謎だ。