黒田電気が開催した臨時株主総会の会場(2017年6月29日、写真:アフロ)

 大阪の電子部品商社、黒田電気の株主総会が6月29日に開かれ、筆頭株主である投資会社「レノ」の株主提案(社外取締役の選任議案)が可決された。レノは「村上ファンド事件」で知られる村上世彰氏の経営するファンドで、社外取締役に元通産官僚の安延申氏が選任された。

 会社側はレノの提案に「乗っ取りだ」として反対したが、議決権の37.5%をもつレノと外資系ファンドが提案に賛成して可決した。株主総会で経営陣の反対する株主提案が可決されるのは異例で、村上ファンド(MACアセットマネジメント)もできなかった。日本でもようやく資本主義が機能するようになったのだろうか。

村上ファンド事件の衝撃

 もう覚えている人も少ないと思うので、一連の事件のおさらいをしておこう。この始まりは、2005年に起こった「ライブドア事件」だった。これは堀江貴文氏の経営していたライブドア(のちにLINE株式会社が吸収)がニッポン放送株を買収し、その保有するフジテレビ株を支配しようとしたものだ。

 これは日本では珍しい敵対的企業買収だったが、ライブドアはフジテレビ株の過半数を買うことができなかった。ライブドアのTOB(株式公開買い付け)やフジテレビの買収防衛策など派手な争いの末に、フジテレビがライブドアに出資する形で和解した。

 ところが翌年1月、東京地検特捜部がライブドアを強制捜査し、堀江社長など4人が逮捕された。このときの容疑は証券取引法違反(風説の流布)だったが、のちに粉飾決算でも起訴された。堀江氏は最高裁まで争ったが、2011年に懲役2年6カ月の実刑が確定した。

 堀江氏にニッポン放送株の買収を勧めたのが村上氏だったといわれ、彼も2006年6月に逮捕された。彼がニッポン放送株をライブドアに買わせて売り抜けた行為がインサイダー取引に問われ、最高裁で懲役2年(執行猶予3年)の判決が確定した。