今の国会は自民党が万年与党だった時代の慣例がそのまま受け継がれている

 昔はテレビで「プロレス中継」をやっていたが、最近は見かけなくなった。最初からどっちが勝つか、分かっているからだ。6月15日の未明に参議院本会議で可決された「共謀罪」法案も、プロレスと同じ八百長である。

「テロ等準備罪」に疑問があることは事実で、金田法相の答弁も迷走した。それなら野党はこの法案を優先して審議すればいいのに、森友学園や加計学園のスキャンダルに審議時間を浪費したから「強行採決」になったのだ。問題はこういう茶番劇が、なぜいつまでも繰り返されるのかということだ。

日本の国会は多数決ではない

 根本的な問題は、日本の国会が多数決で決まらないことだ。もちろん最終的には絶対多数の自民・公明が賛成すれば決められるが、そのためには審議が終わらないといけない。共謀罪は、これまで3度も審議未了で廃案になった。

 国会は憲法で「国権の最高機関」ということになっているが、実際には法案の8割以上は内閣提出法案であり、閣議決定した法案が国会で修正されることはまずない。アメリカでは与党の提出した法案に与党議員が造反することもあるが、日本では党議拘束がかかっているので、造反はありえない。

 自民党の出した法案は採決すれば必ず通るので、野党の唯一の抵抗手段は審議拒否で国会を引き延ばしたり、会期切れで廃案に追い込むことだけだ。国会対策委員会(国対)で法案の優先順位が決まり、議院運営委員会(議運)で審議日程が決まる。つまり法案は

 政調会→総務会→閣議→国対→議運→委員会→本会議

という多重のコンセンサスで決まり、法案ができる前の政調会や総務会の事前審査で多くの与党政治家が介入するが、野党が介入できるのは国対と議運だけだ。政調会も総務会も国対も議運も全会一致が原則なので、野党の最大の権限は審議日程の決定にある。

 与党は野党の嫌がる法案を後回しにして配慮し、野党は共謀罪のような重要法案の審議の前に森友学園や加計学園のようなスキャンダルで騒いで、重要法案を審議未了に持ち込もうとするので、利害の対立する法案はいつまでも先送りされる。法案の中身は閣議決定までにすべて決まり、国会質問は官僚に徹夜勤務を強いるだけの無意味な儀式である。