大統領に就任する前のトランプ氏は中国に対して非難を浴びせ続け、対決を辞さない姿勢を打ち出していた。ところがここに来て北朝鮮の核問題が深刻化するとともに、中国に協力を求める態度に変わったようにみえる。米国は今後、中国に対してどのような政策をとっていくのか――。
私は長年、米中関係の取材・報道に取り組んできたが、その成果の1つとしてこの4月中旬にトランプ政権の対中政策に関する緊急報告の書籍『トランプは中国の膨張を許さない! 「強いアメリカ」と上手につき合う日本』(PHP研究所)を上梓した。
本書では、「東アジアに安定をもたらす安倍・トランプ関係」「中国、北朝鮮と対決するトランプ政権」「アメリカ国民はなぜトランプを選んだか」「トランプの抵抗勢力メディア、民主党との抗戦」など、対中政策にとどまらず対日政策、国内政策、メディアとの戦いなどトランプ政権の全体像について広く論じた。
こうした内容を踏まえて、ここでは米中関係の現状と将来について報告してみたい。トランプ氏がずっと明示してきた中国への厳しい対決姿勢はどうなったのだろうか。
米中首脳会談に関心がなかったトランプ大統領
結論を先に述べるならば、トランプ大統領は中国の軍事力を背景とする領土拡張には今なお強く反対する態度を保っている。現在の柔軟にみえる対中姿勢は北朝鮮の脅威を抑えるための一時的な方途にすぎない、というのが真実だと言える。