全国的な「地方の過疎化」が進む中、若者を都心に流出させず、さらには別の地域からも若者が流入する“試み”を地方自治体が行っている。近年では、それまで地域になかった業種の企業オフィスなどを誘致し、産業自体をゼロから興すケースも目立っている。
前回の記事「雇用対策で始まったアニメ産業、沖縄に根付くのか?」(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48946)で、沖縄県でも、東京のアニメスタジオを誘致する取り組みが行われたことを紹介した。そしてそれを機に、地元企業などと連携して「アニメ産業」を1つの柱にして地域を活性化する計画が立てられた。このプロジェクトは、アニメ作品を生み出し、結実したかに見えた。しかし、結果的には、このプロジェクトが継続的に続くことはなかったという。
なぜ、アニメ産業は沖縄に根付かなかったのか。そこには、企業誘致において、すべての地方が教訓とすべき「産業パッケージのあり方」という問題がはらんでいるという。地理学の面から経済を分析する國學院大學経済学部の山本健太准教授の話を元に、詳しい内容を紹介していく。
沖縄スタジオの生産量が上がらなかった理由
──前回は、沖縄県にアニメスタジオが誘致された経緯を伺いました。実際にこのプロジェクトでは、アニメを軸とした連携が生まれたのでしょうか。
山本健太氏(以下、敬称略) プロジェクト開始から1年後の2011年春には、沖縄県を舞台としたアニメ作品が県内のテレビ局で放映されました。そして、その関連事業も企画されたようです。
まず、プロジェクトに参画していた旅行会社が、県外からの修学旅行生を沖縄に招いて、ダンススクールでレッスン体験する企画を立ち上げます。その際、この企画を宣伝するパンフレットの制作を地元の広告代理店に依頼。そして、そのパンフレットには、先述したアニメ作品のキャラクターが載せられました。アニメを活用して、プロジェクトに参画する各社が連携する形をとったと言えます。