沖縄県うるま市を走る海中道路。

 地方の“衰退”を食い止めるための大きなポイントの1つが、いかに地元の人材を流出させず、さらに別の地域からの移住・定住を増やせるか、だろう。実現策として、新たな産業をその地域に立ち上げて、若い人の働き場所を創出する方法も考えられる。

 沖縄県では、数年前にアニメ産業を地元に立ち上げる試みが行われた。東京にあったアニメスタジオの誘致をはじめとして、他の県内外の企業と連携して、これまでになかった新たな産業、雇用を作る取り組みの一環だった。

 地方に新たな産業を作ろうとした場合、もちろんさまざまな条件や工夫、配慮が必要になる。しかし一番重要なのは、「なぜその地域でやるべきなのか」というオーセンティシティ(真正性)かもしれない。地方での産業が盛り上がり、人材づくりにまで発展させるのは並大抵の努力のみならず、「そこ」でする必然性が必要だ。それらを考える上で、沖縄県のケースは1つの参考になるのではないか。

 いったいそれはどんなプロジェクトで、どんな結果となったのか。地理学の面から経済を分析する國學院大學経済学部の山本健太准教授に話を聞いた。2回にわたってその内容をお届けする。

國學院大學経済学部准教授の山本健太氏。博士(理学)。東北大学大学院理学研究科博士課程修了。九州国際大学特任助教、同助教、同准教授を経て現職。地理学の視点から日本の経済・地域経済の振興を研究する。「ひたすら歩き、話を聞くことで地域の経済が見えてくる」を信条に、フィールドワークを中心とした実証主義に基づく研究を続ける気鋭の地域経済専門家。

アニメスタジオが沖縄県に生まれた2つの理由

──沖縄県で行われたアニメ産業の立ち上げについて話を伺いたいと思います。まず知りたいのは、なぜ「沖縄県」と「アニメ」の組み合わせになったのかということです。