福島原発事故から5年、太平洋の放射線レベルは基準値に 研究

太平洋上から眺めた福島県大熊町の東京電力福島第1原子力発電所(2016年2月22日撮影、資料写真)。(c)AFP/TOSHIFUMI KITAMURA〔AFPBB News

 東京電力の福島第一原発事故から5年以上たつが、まだその賠償・廃炉費用の全容は見えない。経済産業省の有識者会議では、コストが想定を大きく上回ったため託送料(東電が他の電力会社から徴収する送電料金)に上乗せし、新電力にも負担させるという案を経産省が提示し、事業者の反発を呼んでいる。

 経産省はこれまで福島事故の処理費用を総額11兆円程度(賠償9兆円、廃炉2兆円)と見込んでいたが、これが最大7兆円も膨らむおそれが出てきたという。この損失が計上されると東電の経営が破綻するので、経産省は東電を分割して原子力部門を廃炉部門とともに国有化する案を検討し始めた。

賠償・廃炉費用でまた「奉加帳」を回す経産省

 賠償・廃炉費用は、今は国と大手電力が出資する「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」(2011年9月設立)が立て替えて、東電だけでなく他の電力会社も「一般負担金」として毎年約2000億円を支援機構に納付している。なぜ事故に責任のない電力会社が、事故のコストを負担するのだろうか?

 これについては当初から「他の電力会社の財産権侵害だ」という批判があり、支援機構法の立法のとき内閣法制局も「憲法違反だ」として反対した。経産省はこれを「保険料」だと説明して押し切ったが、事故が起こってから保険料を払う保険はありえない。

 たとえばあなたが交通事故を起こしてから「損害保険に加入して保険料を払う」といったら、100%取られるだろう。これは1990年代の不良債権処理で使われた、無原則な奉加帳方式である。今回の託送料引き上げは、その「お代わり」だ。

 経産省は「原子力事業が始まった1960年代から、原発による電力の利用者が事故に備えた賠償費用を確保すべきだった」という珍妙な理屈を展開している。50年前に遡って、過去の保険料を事故が起こってから全国民に負担させようというのだ。