トマ・ピケティが「21世紀の資本」を発表して世界に衝撃を与えてからが約2年が経った。資産家の資産は減りにくいと論じたこの本には賛否両論があるようだが、私自身はこのような定量的なアプローチにはあまり興味がない。富裕層の個人顧客との定性的な会話の中で発見することのほうがよほど多く、現実の世界が見えてくるからだ。
その一例として、2016年になってからニューヨーク、シンガポール、日本で見聞きした「世界の富裕層の投資スタイルの微妙な変化」について紹介したい。
2人の富裕層から持ちかけられた相談
「ファミリーオフィス」という言葉をご存じだろうか。一言でいえば、資産家一族の資産防衛のためのチームである。「弁護士や税理士、そのほかのコンサルタントなどがチームを組み、一族の問題解決に向けて徹底的な手を考える団体、会社」と捉えていただければよいと思う。日本にも資産管理会社というものが存在するが、もう少し本格的だ。
今年2月にニューヨークで出会った、あるファミリーオフィス一族からこんな相談が持ちかけられた。
「アジアに投資したいマーケットがあるんだが、フィジビリティ調査をお願いできないだろうか。