郊外の高層マンションとは対照的に老朽化が進む中心街のビル(筆者撮影、以下同)

 中国河南省の都市、洛陽を訪ねるチャンスがあった。洛陽は唐の時代に都になったこともあり、その名は「洛陽の紙価を高らしむ」などのことわざになって残っている。ただ、今は昔日の面影はなく、中国に数多くある地方都市の1つに過ぎない。

閑散とした工業街

 洛陽の主要な産業は工業。ガラスや農業用トラクターの生産において中国を代表する企業がそろっている。その多くは国営企業だ。

 下の写真(1)を見てほしい。これは工場が集積する地域の道路を撮ったものであるが、街路樹がきれいに整備されているものの人影はまばらであり、時たま自動 車が通る程度であった。工場街であるからそれほど多くの人がいなくとも不思議でないが、それにしても閑散としていた。空地も多かった。これは新たに進出し てくる工場がなくなったためだと言う。

写真(1) 閑散とした工場街

(*配信先のサイトでこの記事をお読みの方はこちらで本記事の写真をご覧いただけます。http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47568)

 いくつかの工場の広報担当者から話を聞いたが、どの工場も過剰生産問題に悩んでおり、生産を抑制していた。そのような状態で、工業が主な産業である洛陽に有力な就職先はない。若者は学校を卒業すると北京、上海、広州、深圳など沿岸部の都市に行ってしまう。市街地の人口は約140万人だが、近年、農村部からの人口の流入も止まり、その人口は減少傾向にある。

誰が住むのか、もはや中国名物の「鬼城」

 写真(2)は、もはや中国名物と言ってもよい「鬼城」(住む人のいないマンション街)。これは新市街を撮ったものだが、既にできあがったマンションに住む人はいない。最初に建ったマンションは、完成から3年が経過するがまだ誰も住んでいない。

写真(2) 中国名物となった郊外の鬼城(住む人のいないマンション群)