映画興行の統計は、12月から新年度が始まる。ヒット作が生まれやすい「正月映画」が12月から公開されるので、作品の興行記録が、なるべく年度をまたがないようにしているのだ。

興行記録は既に過去最高を達成

 というわけで、年度末も近づき、今年度のロシア映画産業の状況もおおよそ見えてきた。10月17日の時点で興行収入の総額は9億ドルに近い数字となっており、不調だった昨年(7.3億ドル)はもちろん、過去最高だった2008年(8.3億ドル)を既に大幅に上回っている。

 映画などの娯楽産業は不況に強いなどと言われるので、この数字だけでロシア経済の回復を判断することはできない。それに、ロシアの映画産業はまだ成長の余地を大きく残しているらしく、比較可能な統計のある2000年代を通じて、成長基調にある(表1参照)。

表1: ロシア・CIS圏(ウクライナを除く)の年間興行成績
年度*1 興行
収入*3
観客数
(百万人)
公開本数 1位作品
興収
1位配給
会社興収
ロシア映画シェア*5
  単館系*4 本数 興収 (%)
2004 252 64.7 286 104 16.025 54.9 51 32.5 12.1
2005 317 83.6 320 103 23.61 77.2 62 94 29.7
2006 412 91.8 293 89 31.97 106.09 59 106 25.7
2007 565 106.6 350 115 30.85 96 85 148 26.3
2008 830 133.9 355 111 49.92 203.5 78 212 25.5
2009 736.2 138.6 323 104 44.62 202.7 78 176 23.9
2010*2 881.18       116.78        

*1 = 年度は前年11月最終日曜日翌日~11月最終日曜日。
*2 = 2010年10月17日までの分。
*3 = 興行収入の単位は百万ドル。
*4 = 正確には「限定的公開」の作品(プリント数30本以下)。
*5 = 合作を含む

出所:KINOBUSINESS.COM

 以前は日本の興行規模(年間2000億円前後)の10分の1と言っていたのが、最近では半分近くになってきた。

 統計の対象はウクライナを除くロシア・CIS(独立国家共同体)諸国なので、人口規模は2.3億人ほど。つまり2倍の人口で半分の売り上げしかないのである。

 もちろん、映画館はある程度以上の規模の都市にしかないので、大都市人口の多い日本との単純な比較はすべきではないが、まだ伸び代はあると見る方が妥当であろう。