10月1日より、今年のインフルエンザワクチン接種が始まっています。

 昨年度の新型インフルエンザ流行の騒動がまるで嘘のようです。今年度のワクチンは豊富に供給されており、希望者は全員接種を受けることができるでしょう。

 今年のインフルエンザワクチン接種は、昨年のように季節性ワクチンと新型(豚)インフルエンザワクチンの2種類を接種しなければならないわけではありません。新型と季節性のインフルエンザワクチンが混合されており、1回の接種で両方のワクチン接種が完了します。

 今年のワクチン接種は、新型インフルエンザワクチンが含まれているため、昨年と同じく国家統制のもと行われます。

 しかし、昨年とは異なり、インフルエンザワクチンの価格決定権は各自治体に委譲されました。このため、市町村によってインフルエンザワクチン接種価格が異なる事態が発生しています。

 「たかが1本の注射の値段じゃないか」と思われるかもしれません。しかし、この価格を巡る混乱は、筋の通っていない、理念なき医療行政の象徴のような気がしてならないのです。

「とりあえず昨年と同じ」価格に

 今年は、昨年のような全国統一価格(1回につき3600円)が決定されていません。その上で厚生労働省からは、「ワクチン接種に関わる費用負担について、必要に応じて低所得者の負担軽減措置を講じること」という通達が出ています。そのため、市町村は、所得に応じた補助金まで考えた上で費用設定をする必要に迫られました。

 結論から言うと、多くの自治体は「昨年度と同じく一律3600円」(市町村内で価格を統一)という決定をしています。

 しかし、今年は昨年度とは違い、インフルエンザワクチン流通が自由化されている分、ワクチンの納入価格は500円くらい値下がりしています。

 せっかく自ら金額を決める権限が委譲されたにもかかわらず、多くの自治体は「とりあえず昨年と同じ」価格にしてしまっているのです。

 ワクチンの納入価格の値下がりを考えれば、安く設定することもできるでしょう。逆に、昨年の問題点や、これからの医療体制の発展と充実などについて深く検討すると、むしろ高く設定する選択肢だって十分にあり得るのです。