(英フィナンシャル・タイムズ紙 2016年6月25日付)
英国の有権者は欧州連合(EU)に歴史的な肘鉄砲を食らわせ、70年間の欧州統合を逆戻りさせ、ベルリンの壁崩壊以来最大となる存亡にかかわる難題をEUに突きつけた。
どんな離婚も何年もの歳月がかかるが、これはすべてのEU首脳が恐れていた瞬間だった。連合を分裂させるだけでなく、西側諸国の戦後秩序を作り替える可能性も秘めた衝撃だ。ブレグジット(英国のEU離脱)はEUを結びつけている絆を引っ張り、加盟国の集団としての地位と影響力を揺さぶる。
EUは追い詰められている。ひとたび英国が去ったら、EUは域内最大の軍事支出国を失うほか、国連安全保障理事会における席を1つ、域内第2の経済大国、そして世界貿易と自由経済を声高に擁護する国を失うことになる。
ブレグジット支持派は、1973年の英国のEU加盟以前にさかのぼる外交上の同盟関係が持ちこたえ、ひとたびEUの足かせが外されたら、さらに繁栄すると確信している。だが、彼らの自信は英国外で広く共有されていなかった。すべての伝統的な同盟国は、例外なく英国に離脱しないよう要請した。
バラク・オバマ米大統領は、英国のEU加盟はワシントンに「環大西洋同盟の強さについて、ずっと大きな自信を与える」と述べた。
欧州理事会のドナルド・トゥスク議長(EU大統領)は「この瞬間が政治的にいかに深刻で、劇的でさえあるか十分認識している。特に英国にとって、この出来事の政治的な影響をすべて予想するすべはない」と語っている。