中国におけるビジネス上のリスクについての6回目は、治安問題を取り上げたい。
中国における2014年の刑事事件の立件数(中国国家統計局)は、全国で約654万件(前年比0.9%減)となった。一番多い窃盗事件は約444万件(前年比約2%減)で、一般的には、すり・置き引き等の軽犯罪が多い。殺人事件は約1万件(前年比約5%減)、傷害事件約14万件(前年比約13%減)、強盗事件約11.1万件(前年比約24%減)、誘拐事件約1.6万件(前年比約21%減)となっている。
特筆すべきは詐欺事件が約78.5万件に達し、前年比16%増となっていることだ。北京市公安局によれば、携帯電話、ネットを通じた「振り込め詐欺」の被害が多く、ネットショップ・銀行等のサービスの詐称、フィッシングサイトへの誘導、裁判所・警察を語り個人情報の提供を強要する等、手口も多様化しているという。
近年では、都市部等を中心に凶悪犯罪が増える傾向にある。日本人が被害に遭うケースとしては、繁華街、空港、レストラン、タクシー、長距離バス、列車の車内等において、スリ・置き引き被害に遭遇するケースが多い。また、タクシー、カラオケ店等におけるぼったくり等も数多く報告されている。さらに、上海では早朝・夜間に路上で複数の男性に囲まれて金品を強奪されたり、就寝中のホテルの部屋に忍び込まれ、体を縛られた上で金品を強奪されたりするケースも発生している。
地域別では、治安状況が相対的に悪い地域として華南地方が挙げられる。特に、在留邦人も多い広東省の東莞市、広州市、深セン市の治安状況には留意が必要である。これらの地域では、スリ・引ったくり、売春、詐欺等の犯罪が相対的に多いとされている。