時空のわずかなゆがみである重力波をとらえる日本の観測施設「KAGRA(かぐら)」。2015年に施設としては完成したものの、本格的な稼働は2017年度内を予定している。
前篇では重力波の特徴と、KAGRAの建設までの道のりを紹介した。
後篇となる本記事では、KAGRAの本格的な稼働に向けての課題と果たすべき役割、そして重力波研究の未来を紹介しよう。
ノイズを除去する地道な作業へ
KAGRAプロジェクトは、2段階に分けて進行している。施設の完成そしてシンプルな長基線レーザー干渉計での試験運転のステージが、第1期である「initial KAGRA」。そして、低温鏡などKAGRAの最終的なシステムによりKAGRAが本格的に重力波を観測するステージが、第2期である「baseline KAGRA」だ。
現在は、施設が完成するinitial KAGRAが終了したところであり、そのあとは本格的な観測に向けたbaseline KAGRAの建設が行われる。
ところが、重力波検出器は一般の装置と違い、建設が完了すれば少しの調整ですぐに観測がスタートできるわけではない。目標感度を出すのには、かなりの時間を要することが想定されている。
重力波の直接検出に成功したアメリカのレーザー干渉計型重力波観測装置(LIGO: Laser Interferometer Gravitational-Wave Observatory、ライゴ)も、感度を高めるための装置の入れ替えが完了してから今回の検出までに1年半の調整期間を必要とした。しかも、現在のLIGOですら、まだ本来の目標感度の3分の1くらいしか出ていない。
KAGRAプロジェクトのサブプロジェクトマネージャーである東京大学宇宙線研究所重力波推進室の川村静児教授は次のように話す。