重力波直接「観測」がいかに偉業であるか。今回の米国のニュースからその興奮が伝わる。日本におけるKAGRA計画(大型低温重力波望遠鏡計画)による重力波直接「観測」の期待が高まるばかりである。
本稿では今から100年前の重力波「発見」の偉業を取り上げたい。それはアインシュタインの偉業にほかならない。重力波「発見」の現場は宇宙ではなかった。アインシュタインは自らデザインした「数式」の中から重力波という未知の存在を探り当てた。
重力波とは時空のさざ波である。よく使われる比喩であるが、もちろんこのことを本当に理解した者にはこれは適切な表現であるが、そうでない者にとっては実はよく分からない表現である。
しょせん、時空という用語・言葉は「知っている」だけのことでしかない。時空および時空のさざ波~重力波はともに概念である。
概念は誰かによって概念たらしめられたがゆえに概念として存在する。時空および重力波の概念を確立した者こそアインシュタイン、その人である。
特殊および一般相対性理論の中で「時空」という概念が醸成していった。「概念」をうまく定義するのも容易ではないが、初めにぼんやりとした観念(直観)があり、それが昇華して明確となったものが概念である。
はたして概念には新しい言葉―用語が付与され、辞書に載ることになる。「数」も「時空」も数学上、物理学上の概念である。
観念(直観)を概念に仕上げることがいかに困難なことであるか。1915年にアインシュタインが曲がった時空という概念を確立するまでの軌跡を追いながら、アインシュタインが垣間見た「時空」を覗いて見たい。
アインシュタインの成功の核心は幾何学である。その源流は古代ギリシャ、紀元前300年頃の数学者ユークリッドまで遡る。彼の著書『原論』第一巻 冒頭は次の記述から始まる。