2009年11月に米国のバラク・オバマ大統領が訪中し、胡錦濤国家主席とクリーンエネルギー分野での官民を挙げた米中間の様々な協力プログラムを発表しました。
クリーンエネルギーでタッグを組む米国と中国
その中には、今後5年間に1億5000万ドル(約135億円)の資金を投入し、クリーンエネルギー技術を共同で研究開発する機関である米中クリーンエネルギー研究センター(US-China Clean Energy Research Center)の設立や、米中エネルギー協力プログラム(US-China Energy Cooperation Program: ECP)と呼ばれるプログラムが含まれています。
ECPには、ゼネラル・エレクトリック(GE)、IBM、インテル、ファーストソーラーなど24社の米国民間企業が参加しており、プログラム参加企業の技術や知見を持ち寄って、中国でのクリーンエネルギープロジェクトの開発を促進することを設立の目的としています。
もちろん米国は中国に何の見返りも期待せずにタダで協力しようとしているのではありません。その裏には、巨大な中国のクリーンエネルギー市場への参入という目的があります。
中国は世界最大のCO2排出国ですが、裏を返せば、それだけクリーンエネルギーの事業機会があるということです。リニューアブル発電規模は、既にほぼ米国に匹敵するまで成長していることは前回触れた通りです。
つまり、米国は“協力”という餌で、おいしい中国のクリーンエネルギー市場のドアをこじ開け、そこで“競争”しようとしているのです。ここでも、クリーンエネルギーを巡っての国際協力と国際競争の構図が見て取れます。
前回紹介しました通り、クリーンエネルギー産業では、世界を巻き込んでの協業と競争が行われていますが、今後ますますグローバル化が進行すると考えられます。
その中で、中心的役割を果たすであろう筆頭国は、米国と中国でしょう。この両国が、時に協力し、また時に競争しながら、今後の世界のクリーンエネルギービジネスを牽引し、将来の産業像を形成する可能性が高いと考えます。
そこで、今回は中国と米国のクリーンエネルギー戦略を考察します。まずは中国の戦略です。
中国のクリーンエネルギー戦略
ご存じの通り、中国は市場経済を取り入れてはいますが、5カ年計画で国家の重要事業や経済運営の目標を設定しています。
現在施行中の第11次5カ年計画(2006~2010年)の中で定められた大きな国家目標として、エネルギー効率の改善が挙げられました。
エネルギーを従来通り非効率に使い続け、CO2を排出し、これ以上環境を汚染しながら、同時に経済成長を持続させていくことは不可能であることに、中国政府は気づいたのです。