北朝鮮は、自らは「水爆実験の成功」と称する今年1月6日の4回目の核実験に続き、新たな長距離弾道ミサイルを2月7日午前9時半頃に発射した。2月2日、地球観測衛星「光明星」を2月8日から25日の間に打ち上げる計画を1日前倒ししての実施である。
北朝鮮の核弾頭運搬手段である各種のミサイルの開発は現在どのような状況にあり、今後2020年頃までに、どのような段階に達すると見積もられるのであろうか。
1 ミサイル発射準備の兆候
北朝鮮西部の中国国境に近い東倉里のミサイル発射場は、2008年頃から本格的に整備され、それまで使用されてきた舞水端里の発射施設の約3倍の規模を持つ近代的発射施設に拡張された。
また、建設段階で地下に燃料備蓄施設や電源装置、燃料パイプ系統らしい施設が確認されており、地下から自動的にミサイルに液体燃料を送り込めるように改良されている。
2008年末頃に一応、工事は概成したとみられていたが、その後も発射場の建設整備は続けられた。発射場の最終的な準備施設とみられる固定施設とそれに連接した移動式の組み立て施設は外界から遮蔽され、クリーンな施設内でミサイルのエンジン、電子部品などの最終点検やミサイルの組み立てが可能になった。
さらに、組立後のミサイルは、2本のレールにより台車に乗せられて発射塔まで立てたまま移動することができるようになった。ミサイルを発射台に設置した後は、液体燃料を自動給油でき、最短では数時間程度で発射することができるとみられる。
昨年から衛星写真により、東倉里のミサイル発射場では、発射準備のための活動がみられた。それまで高さが約50メートル程度とみられていた発射塔は補修された。
これまでの高さ約30メートル、直径2.4メートルのテポドン、ウンハよりも高く直径の大きな、新たな大型ミサイル用に、発射塔も高さが増し、ミサイルを支えるランチャーも補強されたとみられる。
これに関連し、衛星追跡センターとそれと道路で連接された要人用とみられる施設が、12月の降雪段階から、建物の屋根が融雪するなど活動状態にあることが衛星画像から確認されている。
新たな大型ミサイルを打ち上げるためには、ミサイルや衛星の追跡施設も更新しなければならない。新たなレーダと指揮通信統制用の通信システムやコンピューターなどの配備も必要になる。この衛星追跡センターの活動も、新大型ミサイル発射の兆候だったと言える。
今年1月25日の衛星写真では、発射塔は遮蔽用の覆いに覆われており、改修または点検が行われていたのかもしれない。また、発射場の反対側にあるミサイルの最終準備施設とみられる固定された建物では、屋根の雪が解け、何らかの活動が行われていることが確認されている。
同施設に通じるミサイル運搬用トレーラーの轍と見られる痕跡が、昨年12月時点の降雪時の衛星画像で確認されている。すでに、分離されたミサイルの1段目と2段目が、最終準備施設内に搬入され、点検、準備が進められていたようだ。
なお、7日発射されたミサイルの外形は、2012年に打ち上げに成功したテポドン2改にぴったりと重なる。今回は新しい大型の弾道ミサイルではなく、手堅くテポドン2改の発射試験を行った。新型の発射試験には、まだ自信が持てなかったのかもしれない。それを打ち消しミサイル発射能力を誇示するかのように、2月11日、朝鮮中央テレビは、今回のミサイル発射の記録映像を公開している。
しかし、1・2段目の燃焼時間が短くなっており、エンジンの推力が上がっている。射程も1万数千キロに伸び、エンジンや燃料の改良が進められたことを示している。今後は、大気圏再突入後の熱や衝撃に耐えられる信頼性のある弾頭を開発するための再突入試験が、いつ行われるかが焦点になる。