9月24日、上海でたまたま乗ったタクシーの中で、運転手は筆者が日本人かどうか試すかのように、やにわに千昌夫の「北国の春」を歌いだした。

 「日本の歌、歌えるんだね」と話しかけると、「待ってました!」とばかりに雑談が始まった。

 「日本は近いよね、飛行機で2時間ぐらいでしょ。友達が数人住んでいるんだ、いい国だって。みんな中国には戻る気がないよ、俺は行きそびれちゃったけど・・・」

 上海市民はよく日本の実情を知っている。ネットや友人、親戚を通じて、メディアが報道しないリアルな日本の情報をつかんでいるのだ。

地元メディアは猛烈に日本を非難

 その一方で、地元メディアは、漁船船長を拘束し続ける日本に対して猛烈な非難を浴びせ続けていた。「中国は厳しい対抗措置を日本に宣告する」「中国民衆の日本への信頼感は損なわれた」など、新聞の見出しは今まで見たこともない強烈なトーンだった。

 5年の歳月をかけて築いた親日ムードを叩き壊すかのような連日の報道は、さすがに、中国にある程度の理解を持っているはずの筆者も驚き呆れるものがある。

 日本叩きの急先鋒「環球時報」は、「中国が日本という隣国と付き合うにはとりわけ注意が必要だということを、今回の事件は教えてくれた」と報道した。クレバーな上海の中国人からは、おそらく失笑を買うだろう。

 また、環球時報にはこうもある。

 「中国がこのように日本を非難すれば、日本の一部の人間を刺激するだろう。だが、今回の事件の拡大は完全に日本が起こしたことであり、日本社会はこの刺激を必ず受け止めるべきだ」