謹賀新年 2016年 From 武者リサーチ
「消費力の国際競争」が2016年のテーマとなるでしょう。IT革命とグローバリゼーションによる世界的な生産性上昇が進展しています。企業が超過利潤を得る一方、労働と資本の余剰は深刻です。その解決には「消費力の向上=生活水準の向上」が鍵となります。
いち早く米国では国民のサービス消費力が向上し、ほぼ失業が解消、ゼロ金利解除を果たしました。欧州では空前の貯蓄余剰(経常黒字)が積み上がる一方、南欧で消費力の立ち遅れが顕著です。
日本では企業の内部留保が空前規模に膨れ上がる一方、政府の賃上げキャンペーンも功を奏さず、消費力は停滞しています。政策のイニシアティブに期待が高まる局面ですが、安倍政権の実行力には期待が持てそうです。
他方、中国は所得配分の壁が、投資から消費への転換を阻んでいます。改革は困難、しかし財政と金融の弥縫策で景気の底割れ回避の努力が行われ、不安はあるものの一定の経済安定化が期待されます。
「消費力」の振興には、制度改革が必須です。また民主主義の成熟度合いが問われます。各国の経済力の強さ、資本主義の健全さが「消費力」によって検証されようとしているのです。当然投資機会もそこにあるはずです。市場経済の合理性、正当性も問われます。
2016年が新たな世界繁栄の入り口でありますように、皆様の投資活動が実りの多いものでありますように。
武者 陵司
(1) 政策がサプライズをもたらす可能性は高い
失速気味の経済と株価、世界投資家の期待減衰
2016年の世界経済では、IT革命の下で将来の展望が切り開かれつつある米国と、過剰投資の後遺症で急失速している中国との相克、がモチーフをなすだろう。