震災後、福島へと向かうバスツアーに3度参加したことがある。
田植えの手伝いや綿の収穫などの農作業を手伝ったり、学校の校庭に移設された臨時の商店街で買い物したり、農家の方の自宅に泊まらせてもらったりした。
みな明るく元気で、少なくとも外から来た人間には、生活における悲惨さは見えてこなかった。
しかし、それを強く感じさせる瞬間があった。バスで飯舘村を通過した時のことだ。
全村避難となった村には、当然ながら人気はまったくない。人が住む地と陸続きで、まったく人の気配を感じさせない土地があることに、言い知れない恐ろしさを感じた記憶がある。
住処を追われた人たちは、新たな土地でその土地なりの生活をすることになる。住む場所は人間を規定する。
僕自身、つい最近神奈川県川崎市から岩手県盛岡市に引っ越した。引っ越してから僕は、ゴミの分別をきちんとするようになった。小さなことだが、僕にとっては大きな変化だ。住む場所は、生き方に繋がっていく。
戦争に翻弄された3人の少女
中脇初枝『世界の果てのこどもたち』(講談社)
3人の少女が、戦時下の満州で巡りあう。高知から満州へと家族で入植した珠子。日本人に土地を接収され、朝鮮から満州へと移り住んできた美子(ミジャ)。横浜で裕福な貿易商の娘として生まれ、何不自由なく育った茉莉。
生まれも境遇もまるで違う3人が、ほんの数日一緒になる。しかしその数日の出会いは、3人にとって、生涯忘れられない経験となる。
戦争という環境は、彼女たちの人生をさまざまに変転させていく。
珠子は中国残留孤児として、日本人でありながら中国人として育てられる。美子は戦争の激化を理由に朝鮮に戻るが、やがて日本に渡り、在日朝鮮人として生きていく。茉莉は、裕福な暮らしから一転、空襲で肉親をすべて失い、焦土となった横浜でどうにか生き延びていく。
戦争という時代に押し流されていった少女たちの人生を、丁寧に描き出していく作品だ。