海外ではどのような報道がなされ、また海外は日本をどのように見ているのか。日本のメディアもこれまでその視点から報道はしてきた。しかし、紙面の都合もあるのだろう。実際に私たちが必要としている内容が意外に少ない。

米国と英国の報道ではかなり違いがある

川嶋諭JBpress編集長、小野由美子WSJ日本版編集長/前田せいめい撮影日本版ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の小野由美子編集長(右)は長年、WSJの東京支局長を務め、日本の情報を海外に向けて発信してきた(撮影:前田せいめい、以下同)

 今から約2年前にJBpressをスタートさせた理由の1つもそこにあった。また、昨年、米国の経済紙、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が日本版(ネット)を立ち上げたのも、同じような理由だと考えられる。

 JBpressが翻訳しているのは英国のフィナンシャル・タイムズ紙(FT)とエコノミスト誌。

 日本から見れば、WSJもFT、エコノミスト誌も同じ外国のしかも英字メディアである。内容も似通っていると思われるかもしれないが、実は記事のトーンがかなり違う場合がある。

 とりわけ、世界を圧倒する軍事力と経済力を持つ米国で生まれ育ったメディアと、英国で長い歴史を刻んできたメディアとでは時として大きな違いを見せる。

 そこで、日本版WSJの協力を得て、米国のWSJと英国のFT、エコノミスト誌では同じようなテーマを扱っていながら視点がどのように違うのかをお届けしたいと思う。日本版WSJの小野由美子編集長と日本の民主党選挙をテーマに話し合った。

 JBpressの読者にはFT、エコノミスト誌はお馴染みなので、小野編集長との対談の中からWSJの内容を中心にお送りする(登場する各記事にはリンクが張ってあります)。

日米の選挙制度の違いから始め、丁寧に報道

川嶋 今回の民主党代表選挙について、エコノミストとFTはともにかなり注目度が高く、熱心に報道していましたが、WSJはいかがでしたか。

小野 今回の代表選に限らず、ここ1年の日本の政治の動きは、かなり手厚く報じてきました。今回の代表選も多くの記事を載せました。

 民主党は昨年秋に政権を取って以降、既に1回首相が代わっているのに、それから3カ月でまた選挙。アメリカの読者にとってはとても分かりにくいんですね。選挙制度も違いますし、非常にベーシックな説明から始めました。

 アメリカに直接的な影響を及ぼすこともあります。9月後半に開かれる国連総会に出席するのは誰になるのか、バラク・オバマ大統領との2国間首脳会談を開催できるのかなど、具体的な疑問もありました。

 また、普天間基地移設問題はどうなるのかなど、アメリカにとって気になることはいくつもありますから。