TPPなどの貿易協定に「為替操作」禁止条項を盛り込むよう求める声が上がっているが、それは間違い (c) Can Stock Photo

 今年6月、対ドルの円相場は13年ぶりの安値となる1ドル=125円台をつけた後、これ以上の円安はありそうにないという黒田東彦・日銀総裁の発言を受け、122円に迫る水準まで反騰した。

 だが、黒田総裁が後に明確にしたように、日本の金融政策の立案者は為替レートの動きを予測しようとはしないし、ましてや管理などしない。

 日銀の目標は、あらゆる効果的な中央銀行のそれと同様、雇用とインフレの適正な組み合わせを保証することだ。

金融政策と為替レートの関係

 もちろん、一国の金融政策は確かに短期的に為替レートに影響を及ぼす。だが、影響を及ぼすのは、唯一、他の関係国の金融政策との関係においてのみだ。

 今日の日本の場合、為替レートは自国の金融緩和よりも、米連邦準備理事会(FRB)による大規模な量的緩和(QE)が円に上昇圧力をかけた時期を経て、金融引き締めに向かう米国の動きによって決定されている。

 また、国は外国為替市場へ直接介入することで短期的な為替レートに影響を与えることもできる。だが、このような介入は複雑だ。特に、自国の金融政策のアプローチと他の関係国のそれとの関係を考慮しなければならないからだ。

 さらに、例えば、米国が1ドル=100円を目指す一方で日本が1ドル=120円を目指せば、結果として、日米関係の緊張を高める恐れがあるだけではない。相容れない為替レートの目標は市場全般のボラティリティーを誘発し、他国への波及効果を伴う恐れもある。