筆者は今年1月、欧州中央銀行(ECB)が量的緩和(QE)を始める意思を明らかにする数日前に、世界のジャーナリスト、政策立案者、投資家が集まるジュネーブのセミナーに出席した。
セミナーでの議論は、安倍晋三首相が2012年に画期的な経済改革戦略に乗り出す前の日本の議論と酷似しており、非伝統的な金融政策が持つ潜在的な変革力の理解不足を反映していた。
非伝統的な金融政策に対する理解不足
実際、セミナーでは、欧州のエコノミストとジャーナリストが否定的な口調で話した。特にドイツ人はその傾向が強かったが、一部の英国人さえ否定的だった。
一部の人は「金融政策の力は限られている。金利がこれほど低い場合は特にそうだ」と言い、また別の人は「緩和型の金融政策がポートフォリオ入れ替えを促すことを期待することはできない」と付け加えた。
こうした発言は、嫌というほどお馴染みのものだったし、QEに基づく現行戦略によって日本が遂げた前進を考えると、若干意外でもあった。明らかに、欧州の多くの人はいわゆる「アベノミクス」の経緯と重要性をよく理解していない。だが、そうした理解が欧州の金融政策の議論を形成すべきなのだ。
2001年、日銀は景気後退からの脱却を後押しする方法を見つけるのに苦労していた。
目標とする短期金利をすでにゼロ近辺まで引き下げていた日銀は、マネーサプライを増やし、長期金利を引き下げるために、公開市場オペ――具体的に言えば、長期国債の購入と日銀に預けられる市中銀行の準備金の増額――に頼った。
だが、日銀のQEの試みは規模が不十分で時期も遅すぎ、景気回復は実現しなかった。当時プリンストン大学の経済学部長だったベン・バーナンキ氏はこの失敗に留意し、日銀はもっと積極的な金融政策を追求すべきだと断言した。