白川方明日銀総裁は新型オペ拡充を決めた8月30日の臨時金融政策決定会合後の記者会見で、臨時会合を開催するに至った背景や、米国と日本の金融政策などについて説明した。報道各社が流した会見内容のフラッシュを見て、為替市場は円買い材料と認識。ドル/円相場は84円台になった。

 日米の金融政策の共通点と違いなどについては、白川総裁からは次のような説明があった(共同通信報道から引用)。

「(FRBの8月10日の決定は)金融の引き締めが生じるのを回避するのが目的であり、金融緩和を継続するということ」

「(バーナンキ議長は)ジャクソンホールの講演では、経済が大幅に悪化した場合に追加的な緩和措置をとる用意があるということを発言された。今回、日銀のとった措置は、8月会合ではFRB同様、金融緩和を維持することを決めた。先々の政策について毎回の決定会合の公表文で『中央銀行として最大限の貢献を粘り強く続けていく』ことを明確に示している。言い換えると経済物価動向や金融情勢の変化によって必要と判断される場合には適時適切な対応を行うということであり、この点もFRBの政策運営にあたっての考え方と同じだと理解している」

「違いは、FRBの方は現在、追加緩和の措置をとっているわけではないということ。日銀は今回、固定金利オペを拡充するということで、景気の下振れリスクに対応して先取り的に、前取り的に、前倒しで追加の緩和を行ったということ」

 上記の白川総裁発言を読んで素直に納得する市場関係者は、おそらくほとんどいないだろう。白川総裁が述べたことは厳密に言えば正しいものの、米連邦公開市場委員会(FOMC)が8月10日に決定した措置は事実上の追加緩和措置だというのが、より一般的な受け止め方である。また、バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長は、必要になった場合に実行する追加緩和の選択肢について、8月27日の講演で個別具体的に詳しく説明した。しかし、日銀からはそうした、市場の関心に沿ったような情報発信が、あまりにも少ない。

 さらに言えば、今回の白川総裁会見についての筆者の率直な感想は、発言内容にもっとパフォーマンス色があってもよかったのではないかということである。建前はともかく、現実問題として、円高進行への対応として追加緩和を打ち出すのであれば、もともと効果が限られていることが分かっている緩和手段であってもできるだけ膨らませて見せるというのが、心理ゲームの色彩を時に帯びることがあるマーケットへの、政策当局の対処法ではあるまいか。