先日、都内で退役米軍将校と会食をした。在日米軍に長く勤務した元将校は、「米軍の見解ではない」と前置きしたうえで言った。
「正直に申し上げれば、普天間飛行場は必要ないです。辺野古への移設という問題ではなく、極東アジアの戦略上、沖縄に米海兵隊はいらないのです」
決して新しい論点ではない。しかし退役したとはいえ、米軍の元将校が海兵隊不要論を述べた点が興味深い。
普天間は言うまでもなく米海兵隊が使用する飛行場である。住宅地に位置しているため危険であり、辺野古に移設せず、そのまま撤廃すべきとの意見だ。元将校は韓国に駐留する米海兵隊で、極東地域の有事には十分に対処できると指摘した。
在日の米海兵隊無用論は、何も氏だけの独自な見解ではない。首都ワシントンにある保守系シンクタンク「ケイトー研究所」のダグ・バンドー上級研究員も、在日海兵隊は必要ないと、米経済誌「フォーブス」で述べている。
日本有事の際に必要なのは海兵隊ではない
「まず朝鮮半島有事では、韓国に十分な米兵力が展開しているので沖縄の海兵隊の支援は不要です。そもそも海兵隊というのは沿岸から地上へ侵入する部隊です。日本の安全保障上、必要になるのは米空軍と米海軍なのです」
しかも極東地域の災害や人道支援のために米海兵隊を投入することは、米財政にとって負担になるだけだという。
それでもバンドー氏は日米同盟を否定しているわけではない。同盟関係の絆は将来も変わらず維持すべきという立場だ。日米合同演習や共同訓練の必要性も説いている。しかし、普天間基地に駐留する海兵隊に関しては、「これ以上この地域に米国の恒久的要塞(米軍)を置いておく必要はない」と断言する。
この声は日米両政府の公式見解とは違うが、基地反対を叫ぶ沖縄県民にとっては追い風であろう。