本記事は3月6日付フィスコ企業調査レポート(ミルボン)を転載したものです。
執筆 客員アナリスト 浅川 裕之

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世界No.1をめざして主戦場を「グローバル」に移す

 ミルボン<4919>はヘア化粧品の専業メーカーで、プロフェッショナル市場(美容室向け市場)における国内トップシェア企業である。日本の美容文化はそもそも欧米諸国から流入して発達してきた経緯もあって、長らく欧米メーカーが強みを持っていたが、同社はヘア化粧品や美容技術の開発に取り組み、国産メーカーのリーディングカンパニーとしての地位を確立している。

 国内の美容市場について、低成長あるいはマイナス成長を懸念する見方もあるが、弊社ではまだ成長余地はあると考えている。同社製品の顧客である女性ユーザーの「美の追求」ニーズは、年齢によりニーズの内容は変化しても、ニーズ自体が消えることはないと考えているからである。同社自身も「エイジングケア」や「システムヘアケア」というコンセプトを前面に打ち出して製品ラインアップ強化に努めている。その第1号のヘアケアブランド「オージュア」は狙いどおりのヒット商品となり、同社の戦略の正しさを実証した。次シリーズのローンチが待たれるところである。

 長期的成長を追求するうえでは海外市場の開拓がカギとなることは言うまでもない。同社は2014年までの前中計において海外に9拠点の足掛かりを創り上げた。2015年からの新中計ではさらにグローバル展開を強化し、海外を販売と生産の両面で収益拡大の拠点へと成長させることを目指している。新中計の最終年度に当たる2019年において売上高35,000百万円、営業利益7,000百万円、海外売上比率18.6%を計画している。

 株主還元でも積極的な姿勢が続くと期待される。同社は株主還元策として配当を基本とし、配当性向40%以上を目安として業績に応じた配当を行う方針を表明している。また、個人投資家が投資しやすい環境づくりを狙って、1996年の株式公開以来過去19年間で8回の株式分割をおこなった。その間、企業業績の着実な成長を実現してきたため、株式分割が株主にもたらしたリターンも大きなものとなっている。

Check Point

●同社が注力する「エイジングケア」シリーズは成長市場を創出
●顧客ニーズの把握力と製品につなげるスピード感を伴った開発力が強み
●ROEは安定的に10%超と優良、売上高当期利益率の上昇に期待

会社概要

欧米企業が強みを発揮するなか、プロ用市場の国内トップ企業に成長

(1)沿革

 同社は1960年に、プロフェッショナル向け(業務用)のヘア化粧品(コールドパーマ用剤やシャンプー等)の製造販売を目的にユタカ美容化学株式会社として設立された。

 日本の美容文化は、戦後になって欧米から入ってきて発展したこともあり、欧米企業が強みを発揮しきてきた。そうしたなかで同社は、国産メーカーとして美容師・ヘアデザイナーがサロンで使用するシャンプー、トリートメントなどのヘアケア製品やパーマネントウェーブ用剤、ヘアカラー(染毛剤)などの開発や美容技術の改良に努め、プロ用市場では国内のトップ企業に成長した。

 株式市場には、業界で初めて1996年に株式を公開した。その後2000年に東証2部に株式を上場し、さらに翌年には東証1部に指定替えとなって現在に至っている。

代理店からサロンまでカバーするフィールドパーソン戦略が特長

(2)事業内容

 同社が手掛ける「ヘア化粧品」は、その種類や市場に応じて「ヘアケア用剤」、「染毛剤」及び「パーマネントウェーブ用剤」の3つの部門に分けられている。ヘアケア用剤にはシャンプー、トリートメント、スタイリング、スカルプケアなどが含まれている。2014年12月期の売上高構成比は下のグラフのようになっている。