本記事は2月18日付フィスコ企業調査レポート(ウィルグループ)を転載したものです。
執筆 客員アナリスト 柄澤 邦光

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業種特化のハイブリッド派遣を核に成長戦略が進展

 ウィルグループ<6089>は、業種に特化した人材派遣及び業務請負を行っている。持株会社の傘下に国内4社、シンガポール3社の子会社を持つ。業種特化に加えて、「ハイブリッド派遣」という特殊な派遣方式による独自のビジネスモデルが強みとなり、事業を着実に拡大している。

 2015年2月5日に発表した2015年3月期の第3四半期連結決算は、売上高で前年同期比21.4%増、営業利益で同9.9%増とほぼ2ケタの成長を達成、過去最高を更新した。現在の主力事業である、携帯電話・スマートフォンなどの商品販売、コールセンター、食品など工場の軽作業の3つの分野での人材サービスが好調だった。3事業以外の「その他事業」は、複数の国内新規事業と海外事業で構成され、全体としては赤字であるものの、国内外ともに将来に向けて大きな進展を見せた。国内では介護士派遣とネット人材紹介の2事業が急拡大し、3つの主力事業の次の成長をけん引する役割としての期待が膨らんでいる。海外事業もシンガポールの人材紹介会社を買収し、アセアン市場全域を見据えた体制構築を大きく前進させた。

 これら好調な業績を達成できた理由は、独自のビジネスモデルをもとに「シェア拡大」「エリア拡大」「人材紹介業の強化」という3つの成長戦略が着実に進展していることが挙げられる。さらに、これら成長戦略プラスαの戦略として掲げる「新分野への事業拡大」も大きく進展している点が見逃せないと言える。第3四半期も社内のビジネスコンテストなどから複数のユニークな新事業が立ち上がっている。

 2015年3月通期の業績予想は期初計画を据え置いたが、売上高、利益ともに前期比2ケタ増、5期連続で売上高と利益の過去最高更新という高い目標を目指すことに変わりはない。

 また、中期的には、介護士派遣、ネット人材紹介を2〜3年後には中核事業に位置付けられるくらいに拡大させることが可能とみており、主力3事業とともに同社の収益のけん引役になると期待している。海外事業も5年間程度のスパンで大きな収益源として拡大していく方針。これらによって、売上高の拡大に加え、現在3%前後の売上高営業利益率を4〜5%にまで引き上げるとしている。

Check Point

●第3四半期も引き続きすべてのセグメントで2ケタの増収
●通期は期初予想を据え置くが、2ケタ増収増益を目指す
●潜在需要は旺盛

決算概要

四半期5期連続の増収増益、創業以来過去最高を更新

(1)2015年3月期の第2四半期連結決算

 2015年3月期の第2四半期連結決算は、売上高が前年同期比22.2%増の15,185百万円、営業利益が同13.3%増の335百万円、経常利益が同16.5%増の341百万円、四半期純利益が同25.3%増の189百万円となった。第2四半期ベースでの増収・増益は5期連続、売上高、利益とも創業以来の過去最高を更新した。期初計画比では、売上高が0.1%の上振れとなったほか、営業利益が80.1%、経常利益が83.3%、四半期純利益が170.0%の大幅な上振れとなった。

 売上高では、商品販売のスタッフ派遣及び業務請負を行う「セールスアウトソーシング事業」、コールセンターのオペレーター派遣及びコールセンター業務の請負をする「コールセンターアウトソーシング事業」、製造業における工場等の軽作業の業務スタッフ派遣と業務請負を行う「ファクトリーアウトソーシング事業」の3つの主要セグメントがいずれも2ケタの増収となった。セールスアウトソーシング事業の売上高は前年同期比21.4%増の6,198百万円、コールセンターアウトソーシング事業の売上高は同17.6%増の3,928百万円、ファクトリーアウトソーシング事業の売上高は同21.1%増の3,481百万円となった。

 セールスアウトソーシング事業は、業務請負の受注が拡大した。コールセンターアウトソーシング事業は、テレマーケティングサービス会社を中心に新規顧客の開拓が成功し、人材派遣を中心に受注が拡大した。ファクトリーアウトソーシング事業は、食の安全意識の向上に伴って食品製造の国内回帰が進んだため、同分野での人材派遣が拡大した。