本記事は1月21日付フィスコ企業調査レポート(シンワアートオークション)を転載したものです。
執筆 客員アナリスト 柴田 郁夫

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シェア6割の美術品オークションが順調、再生エネルギーも拡大期を迎える

 シンワアートオークション<2437>は国内最大級の美術品オークション会社である。日本の近代美術を中心として、近代陶芸やブランド雑貨、時計、宝飾品なども手掛けている。2,000万円以上の高額落札作品における市場シェアでは業界トップの59.1%を占めている。一方、長期間にわたるデフレ経済の環境下で日本のオークション市場、並びに同社の業績は停滞感に覆われてきた。同社は2014年5月期より新中期経営計画をスタートさせるとともに、第2の創業期と位置付け、プラットフォーム構想によるオークション事業の拡大、及び再生可能エネルギー関連事業など将来の安定的な収入源となり得る新規事業への参入に取り組んでいる。足元で回復基調にあるオークション市場と新規事業の本格稼働により、同社は新たな成長フェーズに入るものと考えられる。

 2014年5月期業績は、売上高が1,385百万円、営業利益135百万円であった。当該期より連結決算に移行したため前期比はない。主力のオークション事業は、オークション市場の回復基調を受け、出品数や平均落札単価、取扱高がそれぞれ大きく拡大したことから手数料収入が想定以上に伸長し、収益性も大きく改善した。一方、新規事業である再生可能エネルギー関連事業や医療機関向け支援事業は、進捗に遅れが生じたことから売上高、利益ともに計画を下回った。

 同社は2015年5月期の業績予想について、売上高を前期比169.1%増の3,728百万円、営業利益を124.7%増の304百万円と大幅な増収増益を見込んでいる。デフレ脱却に向けた政策の進展によりオークション市場の回復基調が続くことに加えて、再生可能エネルギー関連事業における太陽光発電施設の分譲販売が下期以降に大きく伸長する計画となっている。

 同社の成長戦略の柱は、オークション事業の拡大と新規事業による安定収益源の確保、アジア戦略の3つである。特に、オークション事業におけるプラットフォーム構想と太陽光発電施設の分譲販売の進捗に注目したい。プラットフォーム構想とは、「日本近代美術再生プロジェクト」と銘打ち、同社がマーケットメイク機能を果たすことで日本のオークション市場の回復、ひいては本来あるべき市場規模に再評価されることを目指す壮大なビジョンに基づいている。また、足元で引き合いの強い太陽光発電施設の分譲販売は、節税効果及び安定収益の期待できる投資案件として、これまでの富裕層マーケティングとのシナジー効果が期待できる分野であり、この2つの事業が同社の中期的な成長をけん引するものと見られる。

Check Point

●美術品オークションのパイオニアで業界をリード、再生エネルギーなど新規事業も開始
●今期も大幅増収増益へ、オークションに加えて再生エネルギーも寄与
●資本力を駆使したプラットフォームを構築しオークション事業を拡大

事業概要

美術品オークションのパイオニアで業界をリード、再生エネルギーなど新規事業も開始

 同社は国内最大級の美術品オークション会社である。1989年の創業以来、業界のパイオニアとして国内のオークション市場をリードするとともに、業界唯一の上場会社でもある。日本の近代美術を中心として、近代陶芸やブランド雑貨、時計、宝飾品なども手掛けている。特に、同社が得意とする2,000万円以上の高額落札作品においては業界トップの59.1%を占めており圧倒的なシェアを誇る。

 美術品に対する専門性の高さや富裕層マーケティングによる人的ネットワーク、実績に裏打ちされた信用力やブランド力などを強みとして、業界のリーディングカンパニーとしての地位を確保してきた。

 また、前期(2014年5月期)からは、これまで積み上げてきた富裕層マーケティングとのシナジー効果が期待できるとともに、将来の安定的な収入源となり得る新規事業として、診療報酬債権のファクタリングを中心とした医療機関向け支援事業、及び太陽光発電による再生可能エネルギー関連事業にも参入した。