北アルプス、南アルプス、そして中央アルプス。これらの山々に囲まれた長野県は日本の中ではかなり寒い地域に分類されるだろう。しかし、そこで冬にも電気やガス、灯油などを使わずに快適な生活が送れるとしたら・・・。
私たちはエネルギー問題と言うとすぐに供給側のことを考えがちだ。日本の世論を二分している原発問題はまさにそうだろう。ところが、消費側から見ると全く違った風景が目の前に現れてくる。
冬はマイナス10度近くになることも珍しくない長野県富士見町で、太陽の光と薪を使った暖炉だけで暖房をまかなっている家がある。
環境省のキャリア官僚で現在は大学に出向し上智大学で教鞭を執っている中島恵理さんのお宅である。
しかも、太陽光発電で冬でも電力会社に売電できているという。なぜ、そのようなことが可能なのか。 早速、中島さんのご自宅を訪問した。
エネルギー問題を議論することは極めて重要だが、中島さんのように実際に行動する人が1人でも多く現れれば、日本は間違いなく変わる。ご自宅を訪問してそう確信した。
環境省に勤めながら、環境に優しくない生き方をしていた
川嶋 中島さんはどういう経緯で東京と長野の二地域居住をされるようになったんですか。
中島 環境庁(現環境省)に入って2年目ぐらいの1997年頃ですが、環境の仕事をしているのに、環境に優しくないなという思いがあったんです。
というのは、その当時、循環型の地域づくりということで資源循環について考えたり語ったりしているけれども、効率性をとことん追求する東京で、まるで24時間営業のように夜中まで働いている自分は全く環境に優しくないかもしれないと(笑)。
環境に優しい暮しというのは、心豊かで、社会にとっても有益なものだと思っていたんですが、東京の満員電車の中で、こんなに夜遅くまで仕事をしているのはちょっと違うんじゃないかなと。そういう生活の中で、農業や農村に関心を持っていたんですね。