マット安川 テロリストによる仏メディア襲撃という、波乱の幕開けとなった2015年。国際問題アナリストの藤井さんを迎え、国際情勢の展望を伺いました。
フランスのテロ事件で明らかになった移民政策の間違い
国際政治学者。未来学者。詩人。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、米国クレアモント大学大学院で政治学修士号取得。ハーバード大学政治学部大学院へ進み、政治学博士課程修了。ハーバード大学国際問題研究所・日米関係プログラム研究員、政治学部助手を経て帰国し、テレビ・ラジオのキャスター、コメンテーターなどを務める。『日本人が知らないアメリカの本音』『アングラマネー タックスヘイブンから見た世界経済入門』など著書多数。(撮影:前田せいめい、以下同)
藤井 今回のフランスのテロ事件は、結局、フランスが長年取ってきた移民政策の間違いが、ああいう形で総決算として出てきてしまったのだと思います。
フランスはカトリックの国ですが、政治と宗教は分離しようということをフランス革命以来一生懸命やってきた。しかし、やはり人間ですから、ある意味で一番大事なのは宗教的信念だと思っている人が多い。そのカトリック社会であるフランスにあれだけ多数のイスラム教徒を受け入れた移民政策が間違っていた。
フランスに移民してくる人たちが、その国の文化、それは言論の自由ということも含めて、国の秩序なりを破壊しようというのは非常に困ることです。これはイスラム教徒に限らず、フランスに移民するなら、フランスが好きで、文化を尊重する、生き方、秩序を尊重して、その中で自分も生きていくんだという人でないと。
そうではない経済的理由、あるいは難民というやむを得ない場合もあるでしょうが、そういう人たちが来てしまった。その数が社会の中であれだけ大きな塊になってしまったら、これは生体拒絶反応みたいなものです。イスラム教徒も不幸でしょうが、お互いにそうなってしまう。
ちなみに私はアンチ・イスラムではないことを申し上げておきます。イスラムの友だちがいっぱいいます。ユダヤ人の友だちもいっぱいいますけれど。
私はイラクのクルド人独立運動を支援しているほか、中国のウイグル人の独立運動を支持しています。彼らはほとんどがイスラム教徒です。インドネシアにも友だちがいますが、インドネシアもほとんどがイスラム教徒です。穏健なイスラム教徒はぜんぜん問題ないけれど、一部の過激主義がテロを容認している。
移民2世らの欲求不満にうまくつけ込むイスラム過激派
フランスでもどこでもテロリストになるのはパターンがあります。移民してきた初代の人はテロリストにはならない。
例えばアラブからフランスに移民する場合、フランスはキリスト教社会だと知っているけれど、自分の安全や経済的なチャンスなどを求めて行くんだから、ある程度多数派の人たちから差別されてもしょうがない、得るものが大きいから行く、だから我慢もするし、融和的にやっていこうとする。