アフリカ系英国人スーパーモデル、ナオミ・キャンベルが、1997年、ネルソン・マンデラ主催の夕食会の後、西アフリカの小国リベリアの時の大統領チャールズ・テイラーからダイヤの原石を受け取っていたことを今年8月初めに認めた。
産出量よりはるかに多いダイヤモンドの輸出
それだけ聞くと、一国の独裁者がモデルに贈り物をしたというありきたりなタブロイド紙ネタにしか思えないが、これはれっきとしたオランダ、ハーグにある国際刑事裁判所、シエラレオネ国際戦犯法廷での証言である。
法廷が知りたいのは、ダイヤの授受の事実そのものと言うより、その出所、そして供給路である。
リベリアはダイヤ産出国ではあるものの、ごく少量。にもかかわらず、それをはるかに上回る量の輸出を続けていたことから、隣国シエラレオネからの密輸品をリベリア産と偽り、国際市場に放出していた、との疑いを持たれているのである。
昨今、ウナギなどで日本でも問題となっている産地偽装程度の問題のようにも思えるが、それだけで戦犯法廷が動き出すはずがない。
実は、そのダイヤがいわゆる「紛争鉱物」である「ブラッド・ダイヤモンド」である可能性が高く、シエラレオネからリベリアのテイラーの事務所経由で輸出されていた証拠をつかもうというわけだ。
もともと英国領で、教育や道路などインフラが比較的整っていたシエラレオネは、1961年に独立した。
しかし、1968年にシアカ・スティーブンス独裁政権となってから国力は凋落の一途をたどり、国が独占したダイヤモンド産業にはマフィアも介入するなど、腐敗は進むばかりだった。
閉塞感に苦しむ住民たちは、「革命」を掲げ勢力を伸ばしてきた革命統一戦線(RUF)に同調し反政府運動を展開、1991年には内戦に突入することになる。
ところが、RUFの中心人物アハメド・フォディ・サンコーは、旧知の仲であるテイラーと共闘を組み、国境地帯に拠点を設け両国で残虐極まる内戦を始めてしまう。