教育現場を描くドラマは多い。普段テレビを見ない私でも「女王の教室」や「ドラゴン桜」くらいは知っている。現実の世界でも、百ます計算の陰山英男や、最近では“ビリギャル”を慶應大学に入れた坪田信貴の奇跡が有名だ。フィクションでもノンフィクションでも、こうしたドラマに共通しているのは、ダメだと思われていた生徒が教育によって周囲が驚く成長を果たすストーリーである。

 そんな現場を、自分が当事者の1人として目の当たりにすることになるとは思わなかった。

女子生徒の就職状況が一気に向上

 神戸常盤(ときわ)女子高校は、神戸市長田区の急斜面に造成された住宅街の真ん中にある女子校である。源流である私立家政女学校は明治41年創立で、兵庫県の私学の中でも五指に入る長い歴史を持つ。兵庫では昔から庶民の行く学校であったという。

 そんな学校が教育界で注目されるようになったのは、「トキワACT」と呼ばれる週1回の農業の授業を導入したからだ。

 トキワACTによって、勉強するモチベーションの低かった生徒たちが目の色を変えて勉強するようになった上に、社会で生きていく力を何倍も向上させたと見られている。

 トキワACTは、昨年の2年生の「キャリアコース」(就職クラス)で導入された。そのため今年最初の卒業生が出るのだが、それまで一発合格率(就職試験や面接に最初に行ったところで採用が決まる率)が3~4割程度だったのが、今年は8割に達した。クラスは30人なので、24人が第一志望の会社に就職を決めたことになる。