暮れも押し迫った12月29日、ギリシャ国会が早期解散した! これはEUにとって大変な意味を持つ。

 最近あまり話題に上らなかったギリシャだが、今、突然、極度に混乱して再浮上。この一連の動きにより、ギリシャは今度こそ、ちょっとやそっとでは立ち直れない奈落の底に転落する危険が高まっている。

ギリシャ救済策の効果が見え始めた2014年だったが・・・

 ギリシャ経済が大火事になってすでに5年。EUとIMF(国際通貨基金)が介入して、決死の思いで進めてきたギリシャ経済立て直しの効果が、最近、ようやくほんのりと見えかけていた。もうすぐ、ギリシャは独り立ちできるのではないかという期待さえ高まっていたのだ。

12月29日、議会の解散と来月の総選挙実施を発表したギリシャのサマラス首相 (c)AFP/ARIS MESSINIS [AFPBB News]

 ところが、29日にそれがひっくり返った。きっかけは、単純な話だ。現大統領の任期が今年3月で切れるため、国会は次の大統領を選出しなければならない。ギリシャの大統領というのは象徴的なポストで、政治的な力は持たない。

 ただ、この後任が、12月29日までに決まらなければ、国会は解散し、総選挙を行わなければならないと、ギリシャの憲法は定めている。そして実際、大統領は29日までに決まらなかったのである。

 何故か? どうしても総選挙に持ち込みたかったグループが、大統領選出を阻止したからだ。そのため、ギリシャでは1月25日に総選挙となるが、その後の政局の混乱はすでに想定済みで、こうなると、もうEUもIMFもそう簡単に援助の手を差し伸べることはできない。

 とはいえ、対岸の火事というわけでもなく、それこそEUの経済にとっても深刻、かつ危険な影響をもたらす話であるから、彼らの悩みは深い。これには少し説明が必要だろう。

 思えばEUとIMFは2010年5月より、ギリシャの破産を防ぐため、2度に分けて2400億ユーロという膨大な援助プランを実行してきた。1度目の救済730億ユーロは終了。現在は、2度目の救済のうち1530億がすでに支払われている。

 そのうえ、2012年3月には、ギリシャの個人債権者の負債の半分以上を返済免除とし、一気に1000億ユーロの負債を御破算にした。EUは手を拱いていたわけでは決してない。

 ただ、お金を出す人は、もちろん口も出す。ギリシャの財政を立て直すため、EUとIMFと欧州中央銀行がチームになって、その管理に当たった。この機関はトロイカ(三頭立ての馬車)と呼ばれている。

 トロイカが入るとまもなく、信じられないほどの放漫経済と癒着、汚職が明るみに出て、ギリシャの自力更生を信じる人はいなくなった。したがって、トロイカはさらに手綱を締めるしかなかった。