本記事は12月3日付フィスコ企業調査レポート(日本トリム)を転載したものです。
執筆 客員アナリスト 
柄澤 邦光
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販売強化策、新商品の開発、新分野の本格的な事業化を進める

 整水器国内トップの日本トリム<6788>は10月28日、2015年3月期の第2四半期(2014年4月-9月)連結決算を発表した。売上高、利益ともに過去最高 を記録した前年同期に比べ、売上高はほぼ横ばいとなったものの、利益は2ケタの減少となった。要因は大きく分けて2点。1つ目は整水器販売。利益率の高い職域販売(DS事業=ダイレクトセールス)の売上が減少した。ダイレクトセールス以外の直販や、卸売り・OEMによる販売が好調に推移したため、販売台数は前年同期を上回ったものの、利益に関しては利益率の高いダイレクトセールスの落ち込み分を補えず、減益となった。2つ目の要因として、2014年3月期では収益に大きく貢献した米国での遺伝子診断分野で、取引先の売上債権を特別損失に計上したことである。

 2015年3月期第2四半期(2014年4月-9月)の結果を受けて、同社は売上高、利益ともに通期業績予想を下方修正した。しかし、既に対策を打っており、今後の収益に関しては、それほど悲観的になる必要は今のところなさそうだ。

 まず、整水器に関しては、販売不振の原因が営業トークの変更からきていることが明白で、すでに同社では営業トークを修正している。同社によれば、2015年3月期第4四半期中(2015年1月-3月)頃からはダイレクトセールスは回復するだろうとしている。また、新規の販売代理店の確保など、販売強化策も続々と打ち出している。

 次に遺伝子診断分野に関しては、次世代型検査機器(次世代型シーケンサー)向け製品の開発を進めるなど、事業拡大に向けて動き出している。

 一方、上記2つの事業以外の再生医療分野(さい帯血保管)、電解水透析の各事業は順調に進展、農業分野も本格的な事業化に向けて着々と進捗している。また、減益とはいえ、売上高経常利益率は20.4%と 高い水準を維持しており、配当も据え置く。財務体質も変わらずに盤石である。

 業績予想に関しては、現在想定される経営環境下で最も厳しい見通しのもとで作成しており、特に整水器の販売次第では予想が上振れる可能性もあるだろう。

 同社は、「家庭用機器メーカーからメディカルカンパニーへ 」というキャッチフレーズのもと、“水”を切り口に健康維持のための様々な事業を行う企業への転換を大きな目標に掲げている。今回の減益決算においても、この目標は変更されることなく、着実に推進されている。中・長期的な成長に関しては、非常に高い期待が持てる企業と言えよう。

Check Point

●価格競争に陥りにくいビジネスモデルで高い利益率を維持
●営業、PRの強化に加え代理店の追加により販売網を増強
●「水」を切り口に様々な健康維持事業を行い、新規市場を創造

2015年3月期第2四半期連結決算

2Qは2ケタ減益も売上高は過高最高の前年同期と同じ水準

決算概況

 2015年3月期第2四半期(2014年4月-9月)連結決算は、売上高が前年同期比0.9%増の6,678百万円、営業利益が同23.3%減の1,327百万円、経常利益が同29.6%減の1,365百万円、当期純利益が同53.4%減の647百万円となった。