8月13日、ロイター短観とQUICK短観の8月調査が発表された。ドル/円相場が85円台に入ったのは7月30日の海外市場からなので、これらの調査の実施期間は、円高の進行時期と重なり合う。円高の進行は、企業マインドにどのような影響を及ぼしているのだろうか。

 ロイター短観の8月調査(調査期間:7月26日~8月10日、241社が回答)で、業況判断DI(400社ベース)は、製造業が+22(前月比+10ポイント)で、2007年11月以来の高水準。非製造業は▲10(前月比+2ポイント)になった。足元の企業マインドは、円高にもかかわらず、製造業を中心に改善を続けていることが分かる。新興国需要の取り込みもあって、4-6月期の決算が好調だったことが主因だろう。

 ただし、製造業の11月見通しDIは+15で、8月実績に比べて7ポイントの低下になった。見通しDIが低下するのは2007年11月調査以来のことである。これをどうみるか。業種別では、輸送用機器の急低下が突出しているので(8月実績が+38で、11月見通しは▲15)、円高の影響というよりは、エコカー補助金が9月末で打ち切られた後の販売減を強く警戒した数字だと考えるのが自然であろう。他の業種では、11月見通しDIはあまり悪化していない。同じ輸出関連業種である電機については、8月実績が+24であるのに対し、11月見通しでは+35への改善が見込まれている。

 QUICK短観の8月調査(調査期間:7月28日~8月10日、376社が回答)で、業況判断DIは、製造業が+22(前月比+3ポイント)で、2007年11月以来の高水準。非製造業が+15(前月比+11ポイント)になった。製造業の11月見通しDIは+15である。数字の動き方としては、ロイター短観と同様のものになった。

 このように、ロイター短観とQUICK短観の8月調査を見る限り、日銀が注視している企業マインドへの円高の悪影響は、ほとんど示されていない。だが、追加緩和はないだろうと判断するわけにもいかない。