「ケイコール」が、再び、日本列島に天高くこだましている――。アジア人として、前人未到の全米オープンテニス男子シングルス準優勝の快挙を成し遂げた錦織圭が5日、凱旋試合の「楽天ジャパンオープン」で2度目の優勝を果たし、先週のATPツアー「マレーシアオープン」での初優勝に続き、シーズン最多の今季4度目、ツアー通算7度目の優勝を飾った。

 「日本で優勝できて格別です。うれしくて涙がでちゃいました」

全米オープン準優勝、マレーシアオープン優勝と、「世界のトップ選手」の仲間入りを果たした錦織圭。アジア人として前人未到の挑戦が続いている(筆者撮影、以下同)

 “アジア人初の偉業”の重みを背負い、これまでの死闘の道のりがいかに厳しさかったかが、この言葉で手にとるように感じられた。

 時速220キロを超える高速サーブのビッグサーバー、ミロシュ・ラオニッチに競り勝った錦織は、表彰式では、はるかに小柄だったが、威風堂々、誇らしく見えた。

 勝利も束の間、今週は「上海ロレックスマスターズ」に出場し、シーズン終盤を迎えポイント争いで熾烈な闘いが予測される。

 そんな中、東京での勝利で6日発表予定の世界ランキングで6位、年間王者決定戦(上位8人で競う)のシーズン最終戦「ATPワールドツアー・ファイナルズ」(11月9日から16日まで、ロンドン)でのポイントランキングも5位に浮上、アジア人で初めて、その出場権を手中に収めることも確実とされ、まさに、世界が注目の「時の人」となった錦織。

 だが、彼を見るたびに筆者の脳裏に浮かぶのは「ゴルフ界の皇帝」、プロゴルファーのタイガー・ウッズだ。

 どう見ても、どう考えても、2人は似ても似つかないが、実際、彼らを取材してきた経験から、共通点が多いのに気付かされる。

 当然、テニスとゴルフは全く異なる競技。とはいえども、他の競技と比較して、歴史的に群を抜いて排他的という意味では、スポーツ界の中でも類似性がある。アスリート本人だけでなく、事業運営等を行う彼らを取り巻く団体・組織を構成するメンバーにいたるまで、男女を問わず“白人優勢”が長年続いてきた。

長く“白人優勢”だったゴルフ界、テニス界を変える男たち

 特にゴルフの世界では、1960年初頭までツアーに参加できたのは白人だけ。その後30年以上も“人種的鎖国”が続いたが、「黒人を除いては差別なし」といったような有力クラブの幹部の問題発言などで社会問題化し、1990年後半に入って全米プロゴルフ協会(PGA)が差別撤廃に動きだした。