日本経済は「失われた20年」を経て、アベノミクスの登場によってようやく脱デフレの兆しが見えてきた。アベノミクスの3本の矢のうち最も功を奏したのは、黒田東彦・日銀総裁が推し進めた異次元の金融緩和である。ゼロ金利政策と量的緩和により為替レートは1ドル70円台から109円台(2104年9月19日現在)まで円安が進んだ。

 円安の恩恵を享受した日本の輸出製造業は軒並み業績を改善。その典型例が自動車とエレクトロニクスである。

 もちろん例外もある。ソニーは加速する円安をよそに、2015年3月期の業績予想について、最終赤字を500億円から2300億円に大幅下方修正した。業績悪化の主因は、スマートフォンの販売が中国メーカーの台頭により振るわなかったからだと言われている。だが、本当にそうなのだろうか。

iPhone風スマホで市場を席巻する中国メーカー

 中国のスマホメーカーは突如として登場してきたわけではない。その台頭は最初から分かっていたことである。

 中国の大手スマホメーカーと言えば「小米科技」(シャオミ)である。小米のスマホはデザインから販売方法までアップルの「iPhone」にそっくりだ。中国の消費者ならば誰もが分かっていることだが、小米のスマホはiPhoneの「山寨」(シャンザイ)、すなわちコピー商品である。

 しかし、コピー商品が出回っていてもiPhoneは健在である。9月下旬に発売された「iPhone 6」はそれを手に入れようとするファンがアップルストアの前で徹夜して列を作った。新宿の店では、売り切れに怒った中国人が店に乱入し、警察が出動したという。

 では、iPhoneはここまで人気があるのに、ソニーのスマホはなぜ売れないのだろうか。その原因を中国メーカーの台頭に求めるのは間違いだ。