本記事は9月8日付フィスコ企業調査レポート(きちり)を転載したものです。
執筆 客員アナリスト 
佐藤 譲
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競争が激しい業界のなかで着実に成長、人材面における高いマネジメント能力に注目

 きちり<3082>は、女性客層をターゲットとしたカジュアルダイニング「KICHIRI」を関西、首都圏で展開する。高品質な料理とおしゃれ感を演出した店舗づくり、「おもてなし」の接客が顧客の支持を集め、競争が激しい居酒屋業界のなかでも着実に成長を続け、今後は首都圏での出店を加速していく。

 第2の収益柱として育成中のプラットフォームシェアリング事業(以下、PFS事業)は、ITやクラウドを駆使して作り上げた外食特化型の自社インフラをアンテナショップなどを目的にレストランの出店を検討している他業種企業や本部機能の合理化を考えている同業他社に提供するサービスで、利用企業にとっては、効率的・合理的な店舗運営が出来るといったメリットがあり、今後の成長事業として注目される。

 2014年6月期の業績は、売上高が前期比11.1%増の6,913百万円、営業利益が同15.0%減の480百万円と増収減益決算となった。天候不順の影響もあり既存店の売上高は前期比4%減と低迷したものの、新規出店効果により増収を継続した(期末店舗数は前期末比2店舗増の70店舗)。減益要因は、既存店売上の前期比割れによる固定費率の上昇による。一方、PFS事業については、引き合いについては多かったものの、売上高としては前期比横ばい水準にとどまった。

 2015年6月期は売上高が前期比8.5%増の7,500百万円、営業利益が同45.7%増の700百万円と2期ぶりの最高益更新を目指す。既存店舗売上高は前期比1.5%減、新規出店10店舗を計画しているほか、PFS事業での増収を見込んでいる。

 中期計画の最終年度となる2018年6月期には売上高10,000百万円、営業利益1,500百万円を目指す。直営店舗数は首都圏を中心に100店舗まで増やしていく方針。ここ最近では、大手居酒屋チェーンが人手不足を理由に店舗数縮小に動いていることも、出店を進める同社にとっては追い風となる。また、人材の確保が業界全般の経営課題となっているが、同社においては2年前より新卒採用に注力してきたことでその影響が限定的であること、さらに独自の教育体制や人事評価制度の導入により、退職率の抑制を実現。企業の成長の根幹をなす人材の採用、育成面において、高いマネジメント能力を有していることは注目されよう。

 株主還元策では、配当性向を現状の20%から中期的には30%程度まで引き上げていく方針としている。また、株主優待として同社グループ店舗で利用できる3,000円分の優待券を100株以上の株主に贈呈している(近隣に店舗がない場合は同社事業の関連商品)。現在の株価水準(550円)で見れば、総投資利回りは約7%と高利回りとなっている。

Check Point

●2015年6月期は過去最高益の更新へ
●早期から新卒採用に注力、独自の人事評価制度で退職率は大幅に低下
●大手居酒屋チェーンで店舗数を縮小する動き、「KICHIRI」は出店ペース加速も