6月27日、フィリピン政府は、総人口が1億人を突破したことを発表した。若年層の割合が大きく、いまも増加を続けるその人口は、少子高齢化の進む日本を、2023年には追い抜くとの予測もある。

人口爆発がもたらす近未来の災禍

赤ちゃんよ永遠に

 20万年前に登場した現生人類は、農耕の発明で、8000年前、急増した。

 石炭を使い始めた産業革命の頃、増加率は一気に7倍となり、10億人を数えるまでになった。石油の登場が拍車をかけ、増加率がピークとなったのは、1965~70年頃のことだった。

 人口増加への懸念が語られるなか、1968年、米スタンフォード大学のポール・エーリック教授は、「The population bomb」を出版、人口爆発のもたらす近未来の災禍を示し、ベストセラーとなった。

 そんな時代の空気が感じられる映画が『赤ちゃんよ永遠に』(1972)。原題「Z.P.G.(Zero population growth)」そのものに、30年間の産児禁止令の出された大気汚染に苦しむ人間だらけの淀んだディストピアの物語である。

未来惑星ザルドス

 理想郷での選ばれし人々の生活を守るため外界では殺人部隊が稼働し人口調節を行う『未来惑星ザルドス』(1974)。30歳になると「再生」すると信じ込まされ、合法的に抹殺されてしまう『2300年未来への旅』(1976)。

 人口爆発をテーマとした作品は次々と登場した。そんななか出色だったのが、4000万人の人口を抱えた2022年のニューヨークを舞台とした近未来刑事劇『ソイレント・グリーン』(1973)。

 人口爆発と食糧不足に悩む世界で、人肉を食用タブレットの材料にするという究極の「地産地消」策を描いた作品である。

 人口が増え続け、公害が蔓延する世で、人々は、地球の未来を本気で心配した。しかし、これらの著作や映画の示したディストピアは、いまのところ現実となっていない。

 そして、無事(?)、1999年には60億、2011年には70億の人々を抱え込んだ地球で、2050年には90億の人々が暮らすことになるとの試算もある。