マット安川 集団的自衛権が話題となる中、憲法学者・小林節さんに解説いただき、現行憲法の残すべき点や変えるべき点についても詳しくお聞きしました。
「手続き法」が整ったからと憲法改悪を恐れる必要なし
憲法学者、慶應義塾大学教授、弁護士。日本海新聞・大阪日日新聞客員論説委員。『「憲法」改正と改悪』など著書多数。(撮影:前田せいめい、以下同)
小林 国民投票法改正案が衆議院で可決されたことで、憲法改悪への道筋が整ったと懸念する声があります。しかし、国民投票法は憲法の規定に則った改正のための手続き法に過ぎません。憲法改悪が動き出したら、主権者たる国民がストップをかければいいんです。
この手続き法には僕も参考人として関わりましたが、国民投票では憲法全体をひっくるめて是非を問うことはできません。人権、国会、裁判、など論点別に判断を委ねます。さらに重要なのは半年間、憲法改正の是非が国民の論争にさらされることです。その際には、国の費用で全国民に賛成意見と反対意見を同じページ数で解説したパンフレットが届きます。
へんな改正案が出てきたら、私は反対意見の説明の執筆者に立候補します。そしてなぜ反対すべきかを、意を尽くしてやさしく書くつもりです。当然、そこかしこのコミュニティで討論が起きるでしょう。半年も時間があれば、人は絶対に騙されません。
憲法にできること、できないことを明記すればごまかしが利かない
現憲法には幸福追求権を規定した条文があります。人は個人として尊重されるとするこの13条が、私は大好きです。
逆に困ったものだと思うのは、なんといっても9条です。戦争を放棄して軍隊を持たないと言いながら自衛戦争を予定した自衛隊があって、もともとは海外派兵しないと言っていたのに集団的自衛権の行使を容認しようとしている。なんでもありじゃないですか。
いつも言っていることですが、憲法にできることとできないことをはっきり書けばいいんです。侵略戦争は二度としません。必要なら自衛戦争はします。そのための自衛軍を持ちます。厳格な条件のもとに国際貢献もします。厳格な条件とは、国連決議があること、事前に国会が承認すること・・・。こうすれば今もめてる議論なんて全部なくなっちゃうんです。ごまかして自衛隊を海外に出したりできなくなります。