AEC(ASEAN Economic Community=ASEAN経済共同体)という言葉は、日本の読者の皆さんにどれほど馴染みがあるだろうか?
東南アジア諸国連合(Association of Southeast Asian Nations=ASEAN)が推進するASEAN域内における経済共同体構想。その目標期限である2015年は、約半年後に迫っている。
「そもそもASEANとは? AECとは?」などの解説は、書店やネット上など至る所にあふれているので本稿では割愛するが、要は、AECとは「東南アジア諸国連合に加盟している国々の域内で、ヒト・モノ・カネの流れをよりスムーズに(自由化・円滑化)する」ための施策・制度・取り決めの総体である(筆者見解)。
ASEAN後発加盟国ながら、地理的にインドシナの“ヘソ”と言われる要衝に位置するカンボジアでも、AEC実現を間近に控え、その影響が現実の胎動として見え隠れしつつある。
AECをめぐってはASEANに加盟する各国は実は同床異夢の状態にある。そのため、水面下でのせめぎ合いにより前後する施策や制度の施行、その実現を見越した各国・各企業・各個人の思惑も様々で、中にはリスクを取って先行アクションを開始し始める企業や個人も存在する。
実現時期やその順番はまだ定かとは言えないが、「総論」としてはASEAN域内のヒト・モノ・カネの動きは確実に自由化に向かっている。その流れが、現実の「各論」として、現場でどのような事象として発現しているか。それに日本企業・日本人がどう食い込んでいっているか(もしくはいくべきか)。
ASEAN加盟国の1つであり、筆者の活動拠点であるカンボジアから見える「各論」を例に取り、今ASEANの現場で起こっているヒト・モノ・カネの流れの新たな潮流と、その流れに乗ろうと図る日本勢の取り組み事例をご紹介していきたい。
工事現場や外食チェーンなどで顕在化する日本の人手不足
「日本の飲食業界やコンビニにはこれからどんどん外国人が増えますよ。ちょっと前までレジ打ちまで外国人に任せるなんて考えられなかったが・・・」
ちょうど昨年の終わり頃、カンボジアから日本への出張時に筆者と同じ飛行機に乗り合わせた、日本で飲食業向け人材関連ビジネスを営む日本人は、複雑な面持ちでこう話した。
昨年何気なく聞いた雑談は、今年に入り明確なデータとして表れてきた。
厚生労働省がまとめた今年1月の日本の有効求人倍率を59の職業分類別に見ると、求人が仕事を探している人より多いことを示す1倍以上は計37職種(63%)。建設、土木、工事関連の人手不足が特に目立つ。