ニッケイ新聞 2014年4月29日

 3月に国の真相究明委員会で「軍政時代に拷問を行っていた」と供述した元陸軍大佐パウロ・マリャンエス氏(76)が24日、リオの自宅に侵入した3人組に殺害された。同氏は1971年に「行方不明」と公式発表された元下院議員のルーベンス・パイヴァ氏の死の真相などについて語っていた。26、27日付伯字紙が報じている。

殺害されたマリャンエス元陸軍大佐(Marcelo Oliveira / ASCOM ? CNV)

 24日13時30分頃、リオ海岸部のノヴァ・イグアスーの農園内にあるマリャンエス氏の自宅に、武装した3人組の強盗が侵入した。侵入時にマリャンエス氏と妻は不在だったが、戻って来たところを制圧された。強盗は妻と侵入を目撃した管理人を縛り上げた上、マリャンエス氏を別の部屋に連れ込み、殺害した。

 3人の強盗は同日の22時に現場を立ち去ったが、マリャンエス氏はうつ伏せになり、顔を枕に埋めた状態で遺体となって発見された。顔はチアノーゼが色濃く出ており、窒息死と見られている。その他の拷問が行なわれたり、銃で撃たれたりした形跡はなかった。

 検死では、死亡時刻は15時30分頃で「心臓麻痺を起こした」可能性もあるという。強盗は、2台のコンピューターとステレオ、現金700レ、宝石類などを盗んで逃走した。

 警察はあらゆる可能性を想定して捜索中だが、マリャンエス氏の自宅は半径200メートル内に隣家がなく、公的な外灯もない人里離れた暗いところにあった。

 警察は盗まれたコンピューターに軍政時代の拷問に関与した他の軍関係者の名前が書かれている可能性を指摘しているが、全国真相究明委員会も同様の事態を想定し、ジョゼ・エドゥアルド・カルドーゾ法相に、この事件の調査を連邦警察に依頼するよう嘆願した。当時の軍関係者による、これ以上の暴露をさせないための口封じや証拠隠滅を疑った格好だ。

 だが、妻のクリスチーナさんや、息子のような間柄だったという隣人のジョアキン・ソウザさん(25)は、「軍政時代に拷問を受けた人の遺族による復讐ではないか」と見ている。

 それはクリスチーナさんが、強盗がマリャンエスさんに「おまえがドゥッキ・デ・カシアスで殺したある家族のことを覚えているか」と尋ね、それにマリャンエスさんが「知らない」と答えるのを聞いたためだ。またマリャンエス氏自身も日頃から、遺族による報復を恐れていたという。

 マリャンエス氏は3月に全国真相究明委員会などに対し、「カーザ・ダ・モルテ」と呼ばれ、約20人の政治犯が拷問死されたとされるリオ山間部にあった秘密部署に所属していた頃のことについて語り、「必要な限り殺し、覚えきれないほど拷問した」「DNA鑑定のない時代だったので歯を潰し、腕を切った」などと発言していた。

 また、これまでの「行方不明」から「71年に拷問死」ということにされた元下院議員のルーベンス・パイヴァ氏に関しても、遺骨の隠蔽の命令を受けていたことなども明らかにしている。

ニッケイ新聞・本紙記事の無断転載を禁じます。JBpressではニッケイ新聞の許可を得て転載しています)