ベトナムで昨年2013年6月に実施された国会による政府要職者(後述)に対する信任投票が今年は延期されることになった。

 ベトナム共産党一党制の同国で、信任投票は事実上共産党幹部を評価する制度として国民の注目は高かった。任期5年の同職者に対し国会が年に1度行うことになっていたが、わずか2年目において見直しが行われることになった。

 この制度は、2012年11月20日に制定され2013年2月1日に施行された「国会および人民評議会におけるその指名権および人事承認権を有する者に対する信任投票に関する国会決議」(35/2012/QH13、以下、国会決議第35号)に基づく。

 人民評議会とは、いわゆる地方議会に相当するが、ベトナムでは、堅固な中央集権制が敷かれているため、同議会も国家機関となる。

 対象者は、国会では、国家主席、国会議長、首相、閣僚、最高人民裁判所長官、最高人民検察院長等47名であり、各地方の人民評議会では、地方政府に相当する人民委員会の委員長、副委員長等である。

 2013年6月の国会による信任投票では、グエン・タン・ズン(Nguyễn Tấn Dũng)首相(政治局序列3位)の「低い信任」票が圧倒的に多いことが注目された。

政府要職者の選出方法

ベトナムのグエン・タン・ズン首相(ウィキペディアより)

 ベトナムでは、ベトナム共産党の党大会が5年に1度、国会議員選挙が5年に1度行われる。

 2011年1月に開催された第11回党大会では、党員数約370万人に対し、党大会出席者1377人、そこで選出される中央委員175人、同委員が選出する政治局員が16人であった。この少数の政治局が党の路線・政策・方針を決定し、実質的に国家運営に対して大きな力を持つ。

 現在の書記長(政治局序列1位)は、グエン・フー・チョン(Nguyễn Phú Trọng)である。前述した国家主席、国会議長、首相などは国会が人事承認権を有するが、党が作成した名簿が覆ることはない。

 国家主席のチュオン・タン・サン(Trương Tấn Sang)が政治局序列2位、国会議長のグエン・シン・フン(Nguyễn Sinh Hùng)は序列4位である。序列3位のグエン・タン・ズン首相を含め、主要な国家機関の要職は政治局員が兼務している。すなわち、党とりわけ政治局の「意向」が中央から地方までの国家運営を決定している。

 ところで、「法治国家」を標榜しているベトナムでは、10年ほど前から、党、政府の政策を国会における審議を経て「法律」として成立させてきた。

 ベトナムの国会は通常では春に4週間程、秋に4週間程開会されるだけであるが、それでも国会議員による質問や異議が増えてきている。ちなみに国会の常設機関として国会常務委員会があるが、その成員は国会議長、国会副議長を含め現在17人である。