2014年3月26日、日本生産性本部は毎年恒例の新入社員のタイプを発表した。今年度の新入社員については「そこそこの内定を得ると壁にぶつかる前に活動を終了する」と指摘し、危険を事前に察知し衝突を回避する自動ブレーキになぞらえた。

 生産性本部は「劣悪な環境での労働を強いる『ブラック企業』が昨今話題になったため企業情報の収集に熱心で、就職活動を手堅く進めるローリスク志向がある」とその要因を分析し、「リスクを恐れず、失敗から学ぶ経験もしてほしい」とハッパをかけている。

周りを変えることに消極的な日本人

 だが、「リスク回避」は果たして若者だけの問題なのだろうか。

 「世界価値観調査」によれば、日本人は「自分は冒険やリスクを求める」のカテゴリーに自分が当てはまらないと思っている人の割合が世界で一番高い(70%強)。若者に限らず日本人全体でリスクを避けようとする傾向が世界で際立っているのだ。

 (筆者注)世界価値観調査は、世界80カ国以上の人々を対象に、政治・宗教・仕事・教育・家族観などを調べたもの。1981年に欧州価値観調査として開始され、1990年以降は5年ごとに実施されている。直近は2010年11~12月に実施されたが、各国比較ができる最新のものは2005年版である。

 個人的な体験や印象批評ではなく、各種の実験に基づいた客観的なデータをもとに「日本的なるもの」に切り込んでいる社会心理学者、山岸俊男北海道大学教授は、実験を通して「日本人はどんな場合でも他人から非難される可能性があることを避けようとする傾向が高い」と指摘する。リスクに背を向ける人たちの唾液を採取して分析すると、ストレスホルモンの分泌が高いという。

 グローバル化が進む中でどう変わればよいのか分からず、いらだちばかりが募る日本人の心情は、2010年の世界価値観調査によく表れている。つまり、置かれた状況に対して不安や怒りは強いものの、自らが政治・社会問題を変えていこうとする意識は低い。