アメリカ海軍はマレーシア航空370便捜索活動に新型海洋哨戒機P-8ポセイドンを投入しているものの、漂流物発見回収用の艦艇を派遣していない。というよりは派遣する余裕がないと言った方が的確かもしれない。

 そんなアメリカ海軍とは対照的に、中国は海軍艦艇や海洋監視船など合わせて5隻を南インド洋に向かわせている。うち1隻は、3月30日現在、すでに捜索現場海域で活動中である。

 そのように、目に見えて質・両共に充実しつつある中国海洋軍事力に対して、アメリカ海軍をはじめとする国防当局はもとより防衛産業界でも、その強大化のスピードに警鐘を鳴らしている。アメリカ海軍としても海軍関連防衛産業界としても、オバマ政権による大幅な国防予算削減(海軍関連予算も大幅カット)に対して、中国海軍の飛躍的増強を繰り返し指摘することによりアメリカ海軍予算の復活を図ろうとしているものと思われる。

 例えば、アメリカ国防当局と防衛関連企業(およそ1500社)による米国国防に関する軍産複合団体であるNDIA(国防産業協会)の4月版リポートでは、中国海軍の飛躍的増強ぶりに関して改めて警鐘を鳴らす論文が掲載されている。その内容は、日本の防衛にとってもアメリカ以上に認識しておかねばならないものであることは言うまでもない。そこで、以下に要点のみを抜き出してみる。

東アジア海域に限れば現在建造中の航空母艦で十分

 アメリカ連邦議会調査部(CRS)の報告書、「中国海軍の近代化」(2014年2月28日発行)によると、現在就役している中国海軍航空母艦「遼寧」は「そもそも航空母艦と呼ぶこと自体が若干寛大である」と言えるシロモノであり、あくまでも「入門レベル空母」である。もちろんこのような評価は、アメリカ海軍の現役航空母艦を標準にしての話であり、空母としての価値がないというわけではない。

 報告書が問題にしているのは、ウクライナ製の中古練習空母「遼寧」ではなく、それに引き続き中国自身が建造しており2018年ごろにはその姿を見せることになる“本物の”航空母艦を「中国がどのような目的で建造しているのか?」という点である。

 もし中国海軍が現在のアメリカ海軍のような地球規模の海軍を目指すのならば、「おそらく、そのような目的に到達するには、さらに数十年の時間を要するであろう」。なぜならば、そのためには、現在建造中の空母ではいまだに能力不足と言わざるをえないからである。

 しかしながら、中国海軍の目的が東アジア海域、すなわち東シナ海・南シナ海・西太平洋の一部で「アメリカ海軍が実施できるのと同じことを実施する」というのならば、中国国産の比較的小型の非原子力動力航空母艦でも十二分に目的を達成することができる。すなわち、中国海軍はアメリカ海軍同様に、東アジア海域で確固たるプレゼンスを示し戦力投射能力を維持することができるのである。