米財務省は7月16日、5月の国際資本統計(対米証券投資)を発表した。中長期証券取引を通じた米国へのネット資金流入額は+354.4億ドルで、前月の+814.9億ドルからペースダウンとなった(プラスの符号は米国への資金流入額が米国からの資金流出額を上回ったことを示している)。とはいえ、米国市場へのネット資金流入額がプラスになったのは、今回で12カ月連続となる。

 5月は、ギリシャの財政危機が、その他南欧諸国も巻き込んだユーロ圏の信用不安問題へと拡大。欧州連合(EU)・国際通貨基金(IMF)が7500億ユーロの緊急資金支援枠の創設に動いたほか、欧州中央銀行(ECB)がユーロ圏諸国発行の国債買い入れを開始、ドイツが単独でユーロ圏国債などの空売り規制を導入するといった、激動の月だった。欧州通貨統合というシステムへの信認が低下する中で、同時に、ユーロ圏は財政緊縮強化を選択する代わりにユーロ安を容認するだろうという市場の読みのもと、ユーロは対ドルで、月初の1ユーロ=1.32ドル台から、中旬には1.21ドル台へと急落した。こうした為替相場の動きが示すように、5月も、ユーロ建て資産からドル建て資産へと、投資マネーのシフトがグローバルに継続して行われた可能性が高い。今回明らかになった5月分を含む直近数カ月の米財務省統計の内容は、そうした見方を補強する。

 海外投資家による米国の中長期証券への商品別の投資内訳は、直近数カ月、以下のようになっている。5月はペースダウンしたものの、グローバルなマネー運用の一大拠点であるロンドン市場を有する英国からの、米国への資金流入急加速が顕著である(図表3)。