米映画『ターミネーター』シリーズは言わずと知れた俳優アーノルド・シュワルツェネッガーの代表作で、物語の背景は近未来の地球である。精緻なサイボーグも斬新だが、人工知能が統括する機械軍と人間との戦闘シーンがリアルに描かれている。
封切り当初は、機械軍のロボット対人間という架空の状況設定でしかなかったが、米軍はいま真剣に、兵士に置き換えられるロボットの導入を検討している。
米国が真剣に検討する機動力のロボット化
今年1月中旬、米バージニア州で開かれた陸・空軍シンポジウムで、陸軍訓練理論司令部のロバート・コーン将軍は今後5年で陸軍の兵士数を4分1ほど削減する方向で検討していると述べた。兵士の総数を減らしても、兵力を落とすわけではない。
「将来の機動力をロボットに置き換えかえられないかと、米軍は真剣に検討しています。すでに指針ができています。9人の小隊を再構築するレベルにまで話はおよんでいるのです」
新しいモノが好きな米国らしい発想である。考えようによっては、国防総省(ペンタゴン)がハリウッドの発案に追随しているようにも思える。
しかもロボット導入では、軍需産業の既存メーカーだけでなく、シリコンバレーのIT企業も関与し始めており、米国の本気度がうかがえる。
米軍は過去10年以上、兵器の小型化と殺傷力の向上、兵力移送の迅速化に努めてきている。身軽になりながらも兵力はむしろ高める方向にある。
米軍のこうした動きの契機になったのは言うまでもなく2001年9月11日の同時多発テロ事件だ。以来、アフガニスタン、イラク両国での戦争は国際テロ組織との戦いへと変わった。
通常兵器による従来型の戦争から世界中に拠点を置くテロ組織との戦いへと変転を遂げたことで、兵力と展開部隊の再検討が必要になった。そこにロボットの導入が加速されている。
コーン将軍はシンポジウムの席上、ロボットの導入に踏み込むと同時に、具体的に削減する兵士数にも触れた。