安倍政権が誕生してから、「ワシントン・ポスト」や「ニューヨーク・タイムズ」などの英字紙は日本の政治が右傾化する恐れがあるとして警鐘を鳴らした。その後の安倍政権の政策の取り方を見ると、そうした警鐘はまったく的外れのものではなかったと言える。無論、日本国内の世論を見れば右寄り一辺倒になっているわけではなく、日本社会はバランスが取れているように思われる。
タイでは政情不安が収まらない。タクシン派のインラック政権は農民を優遇する政策を取ってきたが、バンコクなどの都市部住民の反発を招き、政府機能が一部失われた。選挙を実施しても、反対派の阻止により一部の投票場は閉鎖を余儀なくされた。タイ社会の二極化は一目瞭然である。
一方、中国社会は、共産党一党独裁政治の下でマスコミなどの論調、とりわけ新聞やテレビなどのメディアの論調が厳しく統制されているため、二極化する動きが顕著に現れていない。何よりも、公の場で政府を批判する言動は政府転覆罪に問われる恐れがあるからである。
しかし、インターネットの掲示板などを見ると、政府を明確に批判する書き込みが多い。政府による統制が強化されているが、ネット人口が5億人を超えているため、政府の統制は十分に行きわたっていない。
そのなかで、改革を求めるリベラルな書き込みと、現在の改革を明確に批判し毛沢東時代を称賛する書き込みも散見される。これは「水面下」で中国社会の二極化が進んでいる証拠である。
民主主義の政治体制を求めるリベラル派
現在の40代以上の中国人は、全員が毛沢東時代に洗脳を受けていた。同時に、反右派闘争や文化大革命などの政治運動の参加者が多く、そのなかで迫害を受けた者も少なくない。40代以上の中国人はほぼ全員が直接的または間接的に毛沢東政治の被害者だったと言える。毛沢東政治を批判する急先鋒となっているのは、茅于軾氏などのリベラル派知識人である。
リベラル派知識人の多くは「改革開放」政策そのものに否定的ではなく、共産党指導部にもっと大胆な改革を求めている。